【経営行動】第11章(終) 組織の解剖学。意思決定の合成と部下と権限のコントロール。あと全体まとめ。
組織の意思決定の合成とは?部下への権限移譲とレビューの機能とは?アラカルト的トピックと経営行動のまとめ。
今回は、第11章。すべての記事の目次はこちら。
今回は、最終章ということで章立てには至らなかったトピックや経営行動全体のまとめを書く。組織の意思決定は相互期待と成果物のパイプラインによる合成になる、という話や、部下のコントロール方法に関する雑感を述べる。サイモンの経営行動のブログを読んできた人ならばすでにご存知かもしれないが、彼は表現に長けている。他のビジネス書では見かけないモデリングと理論化を行い、読者にアハ体験を提供してきた経営行動との旅も、本章で最後となる。噛み締めながら行こう。
組織とは、意思決定の合成である。さらには、意思決定と意思決定に基づく成果物の合成である。例えばX社買収における意思決定は下記のフローで合成されている。
事前調査→計画→最終判断→契約が一般的なフローだ。そもそも最初に、X社を買収出来るか検討せよ、という意思決定が経営者によって号令される。各部署は買収にあたっての事前調査、すなわちデューデリジェンス(DD)を行う。調査した内容は買収と運用プランを練る経営企画部によって合成され、取締役会に上程する買収案として整理される。取締役会では買収案をもとに買収するか否かの意思決定が行われる。買収すると決めた場合、財務部長が契約の実務を行うことになる。
意思決定はそのまま成果物の合成になる。事前調査がうまく行かなければ買収案もうまく行かない。手を抜くとガーベージイン・ガーベージアウトになる。初手大事なのだ。
そして意思決定の合成と成果物の合成を行える前提条件が、相互の信頼関係だ。例えば、財務DDが正しく行われることを、買収案を策定する経営企画部は信頼している。逆に言えば、経営企画部がうまく買収案としてまとめて取締役会にプレゼンすることを、財務DDの担当者は期待しているとも言える。相互信頼の前提が組織の前提になることを、注視しておきたい。
関連する章は第3章にある。部下に意思決定を移譲する場合、価値判断をどこまで行わせるか、というところが問題になる。例えばマニュアルを渡してしまった場合、移譲する権限は0だ。マニュアルの作成からお願いする場合、部下に事実判断の判定部分を移譲したことになる。もし業務の意義から考えて貰う場合、部下に事実判断(業務を能率的に行えるか否か)と価値判断(業務をやる意義)両方の権限を移譲したことになる。丸投げともいうが、、
関連する章は第6章にある。多くのビジネス書でも聞く話だが、たいてい自分が思ったとおりに人は動かないので、成果物はだいたい違うものができる。さらに部下も人なので、上司ほど忠誠心が高いわけではなく、個人的な目標もあるだろう。そこで上司のタスクとしてレビューの必要性が生じる。
サイモンは、レビューには4つの機能があると述べる。
サイモンはレビューする内容についても定義した。汎用的な良いモデル化だ。
サイモンは頻度に関しては特に定義しなかったが、レビューの機能と内容に照らして自分の会社のレビュー体制をチェックしてみてほしい。
最後に経営行動を簡単にまとめよう。
ひとことで言えば、組織の存在意義と意思決定のメカニズムについてのモデル化だ。そしてこの成果こそ、サイモンにしかできない偉大な成果だ。一つ一つの表現がまさに現代も続く組織の諸問題をうまく言い表しており、アハ体験が続く。読者によってはすでに知っている話も多かったかもしれないが、理論化までは至っていないだろう。
経営理論に基づいて行動すると、自分の会社における問題点やメカニズムが見えてくる。サイモンの経営行動には、どこかで聞いたような問題や解決策が多数展開される。すべての人間が経営行動を読んでいるわけではないし、理解したところで解決策を考えて実行できるわけではないので当然同じ問題がループすることになる。
そして度々述べたが、経営行動は正直難しい。なのでごんじっちブログで各章詳しく解説させていただき、世の中で延々ループする問題の解決の参考になれば幸いだ。できれば経営行動の本自身もチェックしてみてほしい。正直内容が多岐にわたるのでだいぶ省略した内容もある。そしてサイモンの一言があなたにひらめきをもたらす可能性もある。一家に一冊、経営行動。
iPad ProとApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も550くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結する。
地味にレア本。ブランドや広告、看板で見かけるフォントを、擬人化。Helvetica(ルフトハンザなど)は王子様系イケメンだし、Futura(シュプリームなど)は天然宇宙少女なのだ。