【経営行動】第8章 コミュニケーションと訓練
組織で一番困る部分。口頭でやるか、マニュアルでやるか、飲み会でやるか。訓練は部下のプライドを溶かそう。情報革命の影響も記載。
今回は、第8章。コミュニケーションと訓練。すべての記事の目次はこちら。
今回は、多くの人を悩ませる情報伝達、すなわちコミュニケーションについてである。現代はサイモンが想定した以上の情報爆発を見せており、あらゆる情報が飛び交い、取捨選択するスキルが必要になっている。大企業でしか保持できなかった情報は少しずつオープンにされてゆき、個人が溜め込める情報もNotionその他のツールの登場で飛躍的に向上した。今やデータベースは個人のものなのだ。
本章のもう一つ重要な話は、訓練についてである。新卒採用は本当にお買い得なのか?すでにスキルがある人を採用するか、伸びしろに期待するか?既存の社員のスキル不足をどう育てるか?といった人材採用と教育の方法について論じる。世間に対して個人的に思うのは、人材採用のことは考えているが、人材教育の観点を考えなさすぎることである。ジャストミートした人材など、最初からいるはずがないだろう。教育を前提に、飛躍してくれるダイヤの原石を獲得したほうが経営効率的に良いのでは、と考えている。
サイモンによれば、組織におけるコミュニケーションには大きく分けて、公式と非公式があり、それぞれ下記のようなものだと考えている。
特に紹介したいのはマニュアルだ。サイモンはマニュアルの作用をうまく表現できている。
つまりサイモンは、マニュアルの副作用として中央の意思決定を作業者が無批判に受け入れる状態を示しているのだ。前回の権限の記事でも書いたが、権限を命令として行使すると部下は無批判で受け入れる状態を生み出す。この行為のやりすぎが大企業のサービスの洗練不足を招いていると私は指摘したが、マニュアルも絶対視すると同じことが起きる。
マニュアル経営といえ良品計画だ。無印良品のディスプレイはきれいなマニュアルに則って行われるので、店舗間の差が発生しない。だが彼らはマニュアルに若干のスラック(余裕)をもたせていて、個別の店舗で工夫して良いところをもたせている。更に商品の改良提案は作業者から行える。マニュアルの中央集権の弊害を認識しており、作業者の創意工夫や批判能力の低下をうまく防いでいるのだ。詳しくは書籍「無印良品の業務標準化委員会: 働く人が仕事を変え、オフィスを変え、会社を変える」を参照いただきたい。
非公式のコミュニケーションは下記だ。
昔、良くやっていた飲み会や喫煙所などは非公式コミュニケーションの代表だ。なんとはない組織図外の会話が思わぬ幸運をもたらすこともあるので、非公式コミュニケーションは許容しておくことが望ましい。特に経営者に取っては非公式コミュニケーションは「組織の世論」として聞こえてくることもあるので重要な要素だ。
クリークはコントロールが必要だ。通常クリークは権力闘争で用いられるものだからだ。日本語で表現すると、派閥、といったほうが伝わるかもしれない。派閥は横断的なグループとして有用に働く場合もあれば、リーダーがクーデターに向けて構築した場合もある。更には無能なリーダーが有用な知識を独占するために構築される場合もある。悪意を持って構築されると危険なため、クリークの存在と成長に気を配るべきである。
次にコミュニケーションのいち形態として、訓練を紹介する。組織内のメンバーの能力を向上されるために行われ、やり方は主に3つある。
訓練を行う時の注意点は、訓練もまた、意思決定の中央集権化を招くことである。危険な業務や特殊な業務など、訓練を通じての公式な指示がほしい状況では訓練は効果があるが、アイデア発想を必要とするような状況ではむしろ弊害を招く可能性がある。
もう一点は既存の社員のプライド問題である。新卒や中途採用の訓練は素直だが、既存の社員はすでに業務をうまく進められているという自覚がある。その状況下で訓練を指示すると、自分自身の存在価値を否定していると錯覚して正常な効果が期待できない可能性がある。知識が不完全なことをしっかりと認め、素直に訓練してくれればよいのだが、、
持論としては訓練を前提として人材採用を行ったほうが、長期的な会社へのエンゲージメントが期待できるのでおすすめしている。ソフトバンクの孫正義氏も、日本電産の永守重信氏も、普通の社員を教育する能力が長けており、結果として長きに渡って活躍している社員をがっちりホールドできている。人材採用を当てにして経営するのではなく、すでにいる人材を教育し続ける戦略を持ちたい。この意味で訓練の意思決定を大事にすべきだ。
情報が爆発した現代では、コミュニケーションコストが組織内経営のボトルネックになる。サイモンは情報革命に関して、人間の注意のコントロールが重要であると説く。
情報革命が起きると、真偽問わず情報が爆発化する。誰もが情報にアクセスでき、ある情報が別の情報に影響を与え、思わぬ影響を与えてしまう。経済用語でこれを外部化と呼ぶ。
外部化とは、既存のメカニズムで行為者の責任が及ばない行為の諸循環を指す。例えば、見晴らしの良いところに一軒家を買ったとする。一軒家の隣にビルが建った結果、見晴らしが良かった景色はすべてビルの窓になってしまった。これは一軒家を建てたときには考えたこともないが、どこからともなく外部の要因が影響を与えてきたのだ。
卑近な例だと、Twitterでの炎上が挙げられる。何気ない失言が炎上し、番組や仕事を失うケースはよく見られる。情報革命の結果、誰かの失言がみんなが参照できるようになったので、外部性の問題が頻繁に起こるようになった。
情報爆発の中、サイモンは対策としてこう述べる。
内容が抽象的だが、要はサイモンは情報を適切に処理し、注意が継続的に向けられるようなデータに落とし込んで貯めろ、と言っているのだ。サイモンの考える適切な情報処理システムの定義を見ると、より意味が理解でいるかもしれない。サイモンは下記のように列挙している。
つまりサイモンは、データをきれいに整形して保持し、意思決定に活用せよと述べている。今までは人間の記憶力が頼りだった。一応、人間は3万冊分のデータを貯蔵すると適切な情報の整理ができるらしいが、情報革命の現代ではとてもじゃないが足りない。AIの活用は難しくとも、まずは外部情報アクセスできる自分だけのデータベースを持つことをおすすめする。そう、Notionだ。
iPad ProとApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も550くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結する。