【誰のためのデザイン】アフォーダンス、取っ手は人につかむことをあらかじめ誘っている?

アフォーダンスという概念の誕生はこの本から。人の行動を混乱させるデザインとは?


ざっくり言うと

  1. 物体があなたの行動を誘っている?アフォーダンスとシャル・ウィ・ダンス。
  2. 人間の誤動作、スリップとミステイク。
  3. エラーを防ぐ方法。情報を対応付ける。


アフォーダンス


デザインで最も気にするポイント、それは「なにも知らないのになんとなくわかる」操作感を出すことである。


当ブログ自身もそうだ。押せそうなところと押せなさそうなところをわざと作っている。


リアルの世界でも経験があるだろう。押すドアだと思ったら引くだったことが。さらにはスライドするドアだったことで驚愕することがあるだろう。


ツマミのようなものを見ると、ついつまみたくなる。場合によっては回してみたくなる。


凹んでいるところと、とんがっているところを組み合わせたくなる。大陸移動説について、ウェゲナーが南アメリカ大陸とアフリカ大陸を組み合わせると「いける」となったからと言うのは有名な話だ。


上記のいずれも、人間の行動を物体が誘っている。これをアフォーダンスという。そしてアフォーダンスをデザインの世界で明確に定義した人物こそ、今回紹介する「誰のためのデザイン(D.A.ノーマン/新曜社)」の著者、ドナルド=ノーマンである。



誤動作のパターン。スリップとミステイク


アフォーダンスは成功例よりも失敗例から見たほうがわかりやすい概念である。例えば混乱を招くインターフェースは典型的なアフォーダンスの失敗例とされる。


押すと開くのか?引くと開くのか?



左のドアは明らかに失敗例である。ドアの取手は明らかに引くことを期待しているが、よく見ると上に PUSH と表記されており、正解は押す、なのだ。だが右が本来アフォーダンスとしては正しく、このドアは引くべきである。


アフォーダンスは上記のような操作ミスを防ぐために、適切に使われる必要がある。そのためにはまず、人間の誤動作のパターンを説明しておく必要があるだろう。人間の誤動作には大きく分けて 2 パターンがある。スリップとミステイクである。



スリップ、自動化された行動のエラー


スリップとは、自動化された行動のエラーである。いつもやっているような何気ない行為の過程の中でミスが起きる。


たとえば、行為ベースのミス。コーヒーにミルクを注いだあとに、コーヒーカップを冷蔵庫に入れてしまった。本来はミルクのパックを冷蔵庫に入れるはずが、コーヒーカップの方を冷蔵庫に入れてしまったことを指す。


たとえば、記憶ラプス。夕食の調理をしたあとに、コンロの換気扇を消すのを忘れてしまった。これは単なる物忘れを指す。何気ない行動の中で、あとに別の行動を期待する行動(ドアを開けたら、閉める必要がある、など)がある。その行動を忘れてしまう。



ミステイク、プラン自体が間違えている場合


ミステイクは適切に状況を見ていたとしても誤った行動を選択してしまうことを指す。


ドアの事例はこちらに近い。引くものだと判断した上でドアを操作し、押して開けると気づくことになる。自動車の ABS 機能も当てはまる。ABS とは、自動車がブレーキを踏まれた場合に、最短距離で止まれるようにタイヤのロックを防ぐ機構であるが、ABS が働いているときにブレーキペダルを自動的に押し出す仕組みを利用する。この時、ペダルを踏んでいる人間はびっくりしてブレーキペダルを離してしまう場合がある。ABS が効くためには踏み続けてもらう必要があるが、実際には踏まれずに終わってしまう。



エラーを防ぐ方法


アフォーダンスには、その仕組みを利用して誤動作を防ぐヒントが隠されている。それは、適切なアフォーダンスの対応付けが人間の誤動作を防ぐことになる、という示唆である。下記がエラーを防ぐ特徴になる。


  • 目に見えるアフォーダンス・シグニファイア
  • 発見可能性
  • フィードバックの即時性

まずは目に見える形で人間に知らせることである。本著ではこれをシグニファイアと呼んでいる。エスカレータには明らかに踏んではいけなさそうな黄色の線が描かれているが、そこがエスカレータにとっては段差が埋まるところで、人間にそこに立つと挟まって危険だ、ということを知らせてくれている。


発見可能性はその名の通り認知しやすいことを指す。これはエラーのうちスリップを防ぐのに有効である。歯磨き粉と洗顔フォームは同じチューブ状をしており、押し出して使うという意味ではアフォーダンスが機能しているが、歯磨き粉と洗顔フォームを見分ける、という意味では機能していないだろう。一方酸性とアルカリ性の洗剤を「混ぜるな危険」という言葉で大きく警告しているものは、発見可能性の観点でうまく機能しているだろう。


何か操作をしたときや変化が起きたときにフィードバックが即時で手に入ることも重要だ。web やアプリの世界では、アイコンの右上の赤丸をバッジと呼ぶが、これも何かお知らせやアップデートがあることを知らせる立派なシグニファイアであり、即時に通知が飛ぶようになっている。


アフォーダンスを通じた研究に派生したものとしては、失敗学がある。日本では工学の世界で研究が進んでおり、失敗学の発案者でこの分野の権威である畑村洋太郎教授は、あまたある失敗をかき集め、体系的にエラーの法則を紡ぎだしている。ポジティブに失敗を振り返って再発防止策を考えることは、ドナルド=ノーマン自身が誰のためのデザイン(D.A.ノーマン/新曜社)で期待していたことであり、関連書籍も多数あるので折に触れて紹介していきたい。


本著はチャーミングなデザインの失敗が多数存在する。まずはそれを眺めて見るのもよいだろう。ぜひ一読してみてほしい。




このエントリーをはてなブックマークに追加