【経営行動】生涯ベスト本。第1章 組織の解剖図
生涯ベスト本、更新。サイモンが生涯に渡って更新した組織論の元祖、その第1章。
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年末年始は WindowsPC の初自作と開発環境構築、さらにサイモンの経営行動との戦いをしていた。
サイモンが生涯をかけてアップデートし続けた書籍であり、今回紹介するのは、最終版となる第四版(1997)の和訳版にあたる。初版(1945)から基本的な内容は変わらないまま、経営組織論のベースとして君臨し続けた本である。そして本著は、僕の生涯ベスト本であった「PRINCIPLES(プリンシプルズ) 人生と仕事の原則(レイ・ダリオ)」をあっさりと抜き去ってしまった。
企業における離職の原因トップが人間関係と言われるように、組織における悩みは尽きることがない。特に上司と部下の関係性についてはベストプラクティスは見つからないまま、経験知が散発している状況だ。
経営行動は散発した組織論に対して一貫したモデルを提供してくれる。そしてそのモデルが少なくとも 1997 年に至るまでほぼ変更されずに生き残っているのだから、サイモンの慧眼には脱帽だ。
経営行動を読了すると、組織の解剖図を手にしたような感覚に至った。医者はまず人体模型がなければ仕事ができないだろうが、ビジネスにおいて組織の解剖図を手にしないままビジネスマンをしていくのは、医者からすれば滑稽と言う他ない。
サイモンの本を読むのはしんどい。サイモンの本は記述が独特で、論理的思考力と読解力を常に試してくる。サイモンの本はあまたある経営学者の文章の中でも異色の文体を持ち、とにかく概念や論理の厳密さを問い詰める用の文章になっている。ゆえに、一文の主述関係が超遠くなっていたり、本来図解すべき内容を一文でさらっと書いていたりする。せっかくなので、「組織内で定義される、実行されるべき価値の判断」に関する文章を紹介しよう。
多分、英語もこんな感じの文章なのだろう。日本語で和訳した人はすごいと思う。正直、一節を読むだけでへとへとで、それを 550 ページ続けるのだから半泣きになった(多分読み慣れている人にとってはまったく苦もないんだろうけど)。このブログではエッセンスを抽出して比較的簡単に読めるよう、努力していきたい。ただ一方で、エッセンスにするとサイモンの伝えたい内容が省略されてしまう。時間を掛けてでも珠玉の文章を読む価値はあるので、我こそはという方は、ぜひ読んでみてほしい。
早速、次節から第一章の解説に入るが、本著の内容を簡単におさらいしておきたい。
経営行動は、組織における構成要素や概念のツール一式を提供することを目的としている。11 章からなる本書、各章は以下の内容を扱っている。(ちなみに僕は第三版(1976)も持っているが、今回紹介するのは第四版である。構成や事例が若干異なるが、別途機会があれば紹介したい。)
組織は下記の構成を取る。企業家、アドバイザー、上司、部下、顧客はそれぞれ以下のように構成されている。この内、顧客とアドバイザーは組織には含まれない。
組織とは、意思決定と行動の集合体と考えられる。組織の構成員はあたかも一人の人間として振る舞い、意思決定と行動を続けて利益を生成する。まさに日本では、組織のことを法人、と「人」として形容するので、この概念は理解しやすい。
企業家は各部門の上司(上司 1, 上司 2)に対して賃金と権限を付与する。上司は部下に対して命令し、部下は成果を提供する。上司部下それぞれは企業家に対して時間と労力を提供する。
一方組織外との関わりとして、企業家は企業として、顧客と関係を持つ。顧客に財やサービスを提供し、対価として代金を受け取る。
企業家はアドバイザーなどを抱えることもある。アドバイザーは賃金、あるいは株式といった資本を提供され、対価として助言と情報を提供する。
以下は組織で働く影響について説明する。5 つ列挙する。
権限は、企業家 → 上司、上司 → 部下へと向かう作用であり、自分の代わりに他の人を使役することを指す。また、議論が荒れたときに最終決断を行う決定権も権限に含まれる。
忠誠心は、組織の目標を達成し続けるために必要な要素である。組織のメンバー以前に個人として労力を組織に注ぎ続けるか、意思決定が含まれるからである。忠誠心は組織全体に向かうこともあるが、部署に向かって派閥と化す場合もある。忠誠心が部署に向かう状態は部署対立をもたらすので、回避する必要がある。
能率は、経営の目標である。経営とはどの選択肢をとるかという意思決定と行動の連続であるが、能率は意思決定時の選択肢の判定に用いられる。すなわち、より少ない投入で最大の産出が得られるのはどれか、という問いである。行為の際には、各成員がどの程度効率よく実行できるか、という能率の問題が生じる。
助言と情報は、通常組織図の公式なルートによらないコミュニケーションを指す。助言はアドバイザーといった専門家を採用することで取得することもあれば、非公式なコミュニケーション(社内のレクリエーション活動や飲み会)を通じた非公式社員グループから得られることもある。助言と情報には通常の成果報告よりもバイアスがかかりにくいので、経営活動に有用なことが多い。
訓練は、各成員の能率の前提になる。人事の意思決定に関連する。人事の意思決定は訓練済みの人材を採用するか、未熟練の人材を教育するかのどちらかである。訓練を行う場合、成否は対象が従順か否かにかかっている。未熟練の場合、社歴が長いか上司に再教育を施す場合、彼らのプライドに傷をつけて思った効果が出ない可能性があるため、事前のケアが必要である。
意思決定は常にトップダウンで行われるものではなく、各成員が行うことがある。組織で行われる意思決定は下記の 3 つである。
組織の部署間で調整を行う。各部署の上司が「この決定は法務部に聞く、あの決定は営業に聞く」というように意思決定を委譲し合成する。
上司が一定の自由裁量を与えられ、責任を取る形で意思決定を企業家に代わって実行する。
成員の中にそのメンバーだけの専門能力がある場合は、意思決定を対象メンバーに移譲する場合がある。法律面や技術面などが考えられる。
第二章では典型的な経営の効率案の誤りを列挙し、論破していく。不定期で連載するので、期待してほしい。
今回はiPad ProとApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も 550 くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結するので、おすすめだ。