【経営行動】第9章 能率の基準。貨幣や時間以外にもある価値。前年度踏襲など経営ではない。
営利組織なんだからすぐ儲かってなんぼ。それは分かるが、貨幣や時間以外にも追求価値を設定し測定できるかが貨幣や時間への効率に影響を与える。
今回は、第8章。コミュニケーションと訓練。すべての記事の目次はこちら。
今回は、能率の話である。個人的な仕事術としても良く言われる内容だが、組織全体として能率を追求する場合の話を書く。能率を考えるには、営利組織では金銭と時間で計測し、投入<産出の維持を絶対として考えればよいのでシンプルだが、人間はそこまで単純ではない。気分や組織への貢献感、その他もろもろが作用する。さらに非営利組織だと事態はより複雑になる。貨幣がないと組織は維持できないのに、貨幣を意識しないからだ。むしろ組織の目的が本来の意味で達成されているか否か、が重要になる。脱炭素を目指す組織ならば、炭素の排出量を測定する必要がある。
サイモンによれば、組織に応じて能率は変わる。営利組織の場合は下記だ。
一方、公共組織や非営利組織は下記だ。
では営利組織ならば貨幣と時間だけを追求すればよいのか?そんなことはない。人間としての産出/投入比はやりがいや福利厚生によっても決まる。最終的な成績を時間や貨幣で計算するのは良いが、貨幣だけを見ていると潜在的な将来利益を逃すことになりかねない。営利組織でも適切な組織目的の設定が重要だ。
能率を意識しながら選択肢を判定する上で、注意点がある。先程選択肢を産出/投入比で判定すると書いたが、残念ながらこれは自然科学ではないので、産出と投入の相関関係が一定でない。自然科学だとエネルギー保存の法則という絶対性のもと、いくら投入するといくら産出されるかが計算できる。一方経営における選択肢は近似こそできても正確に測定できるわけではない。あくまで他の選択肢との相対評価になることに注意したい。
実際に能率を測定するために、経営判断と結果はどのように要素変換すればよいのか。サイモンはご丁寧に、経営組織における要素変換の4要素を整理してくれている。
経営における組織目的の達成具合を測定するためには、下記の要素を確認する必要がある。目的の達成を支える広告効果やシステム構築、研究や営業の遂行具合の確認、努力の投入具合の確認、更には貨幣や時間の消極価値コストの投入具合の確認である。この内最も難しいのは経営的遂行における諸要素の確認である。組織目的を達成するためのキー要素を多変量解析する必要がある。 よくKPIマネジメント、と呼ばれている産物だ。
ソフトバンクの孫正義氏は、ヤフーBBのモデムを無料で配るという作戦の時に、どこでいくらでだれが配るか、という多変量解析を行って成果を最適化していた。側近で多変量解析できないものは去れ、と言ったほどである。KPIを設定する力も大事だが、寄与度も測定してあげる必要がある。よってエクセルで多変量解析を行うべきだ。詳細は下記の書籍「孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術」に詳しいので、一読してみることをおすすめする。多変量解析はエクセルで出来る。
組織目的の設定が論理逆転する状態が、だめな予算案である。組織の目的を設定し、そのために必要なものをブレークダウンするのが基本だが、大企業や公共組織では前年度踏襲、などの悪い慣習がはびこりやすくなる。サイモンは下記4つをだめな予算案のパターンだと指摘する。
また、予算を組む場合に正当化されやすいものがあることにも注意が必要だ。ホワイトカラーの人員削減は好例だ。彼らは事業企画の肝となるので、重要な能力を持つ人間は組織に残す必要があるが、往々にして早期退職で辞めるのは有能で、無能だけが残りがちになる。組織全体として、長期的な産出に多大な悪影響を及ぼすため、気軽にホワイトカラーを削る選択を取ってはならない。
だが実際、日本ではホワイトカラーの人員削減が進んでおり、大失業時代から社会不安を招く可能性がある。大失業時代とスターリンやヒトラーと絡めて書いた記事が別の記事としてあるので、興味のある方は読んでみてほしい。
iPad ProとApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も550くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結する。
教祖マニュアルからオンラインサロンと宗教の共通性を読み解く。もはやティズニーじゃないか。