【スターリン】不況で奮発する労働者の革命を求める声。でも、本当に革命起こしていいんですね?

不況で資本主義はまた資本家だけを富ませてしまったが、だからといって労働者の革命を許したらどうなるか。1934年、大恐慌まっしぐらの時代にソ連を訪れた小説家H・G・ウェルズがスターリンをインタビュー。

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ざっくり言うと

  1. リーマンショック以来の大失業時代。ただの不況ではない。リモートワークがもたらした不可逆な失業率の上昇は労働者に革命の機運をもたらしつつある。
  2. 1934年、大恐慌時代にスターリンをインタビューした記録が山形浩生先生によって訳された。
  3. スターリンの恐怖。大粛清の片鱗が垣間見える。本当に労働者が革命を起こしたら、ソビエト連邦の失敗を繰り返すことになる。


守備的な経営とリモートワークがもたらす大失業時代に、労働者は革命を求める


現在、世界は大失業時代に見舞われた。特に雇用が回復しない可能性が高いのが、日本である。


なぜか。日本は実質賃金率で一人負けしており、日本だけが中間所得者層の没落をもたらしている。内部留保持ちまくりの守備的な経営スタイルが更に極まり、給料への還元は全くされず、日本の企業は経済を減速させる。


さらにリモートワークが浸透し、決して日本には浸透しなかったはずの成果主義が強制的に導入された。今まで顕在化しなかったお荷物社員たちは、一斉に退職の大号令をかけ始めている。大企業では早期退職が展開され、日本が世界に誇る全員就職ボーナス制度、新卒採用の停止も増え始めた。


確かに世界は景気回復を告げているが、本当にこれから以前の完全雇用状態が日本で実現されるかは、甚だ疑問だ。


難しい時代になった。世界の情勢は不安定で、以前にも語ったことがあるが時は完全に1930年ごろの世界情勢に酷似している。そう、ヒトラーやスターリンが幅を利かせはじめた時代。


最近、失業者や低賃金労働者の間で聞く話。株だけが一人高騰していく中で、誰もが期待する、革命を。


「この世の経済格差はおかしい。なんで金持ちばかりが儲かるんだ。必ず、労働者による革命が起こる。金持ちたちは痛い目に遭うだろう。」


日本では行動まで移す人は少ないものの、事実、アメリカでは割安株を掲示板で高騰させるゲームストップ株事件が実際に起こり、結果有名な空売りファンドが敗北宣言を出すまでに至っている


まだ株価市場の話なので良いが、1920年代後半-1930年代前半は本当に行動を移してしまった国がある。ソビエト連邦とナチス=ドイツである。時の指導者レーニン、スターリン、ヒトラーは、労働者の不安が高まる中で、不安を権力につなげ、災厄をもたらした。


今回は1934年、世界恐慌で国民が貧困にあえぐ中でイギリスの名SF小説作家でありいわゆるインテリ階級のHGウェルズが、スターリンにインタビューを行った記録を紹介する。すでに独裁者の影がちらつく恐怖のインタビューだ。



1934年の時代背景を紹介。大恐慌時代で各国はどういう状況だったのか。


スターリンのインタビューは1934年に行われたのだが、その頃の時代背景を把握しておこう。実は1934年当時、まだソビエト連邦やドイツは世界に対して敵意を向けることはなく、あくまで世界に先駆けて経済復興を遂げた優秀な国だと思われていたのだ。


世界恐慌自体は1929年の10月24日、アメリカの株式市場の大暴落をきっかけに始まる。暴落直前、靴磨きの少年が「株に投資しませんか?」と言ったのをきっかけにジョセフ=ケネディが持ち株をすべて売った、みたいな話が残っている。



世界は最悪な状況に巻き込まれる。米国はルーズベルトが大統領としてニューディール政策を行う1932年まで失業者で溢れ、掘っ建て小屋の村がたくさん生まれることとなった。


イギリスは資本の流出から金本位制が終了した。資本家は著しく財を失ったが、労働者は1週間後の食料に困るほどに貧しい生活を続けることになった。


ドイツは第一次世界大戦後の賠償金支払いから回復傾向にある中で再び大恐慌に墜落させられた。失業率は空前の40%以上を記録するも、時の政権は有効な対策を打てず、1933年にナチ党のヒトラー内閣へと移ることになる。1933年からのヒトラー政権はドイツ国内に蔓延していた共産党や社会民主党を駆逐し、アウトバーンといった高速道路計画や秘密再軍備計画をもってアメリカ、イギリス、フランスと比較しても早く経済回復を遂げることになる。世間はドイツのヒトラーを称賛していた時代である。


ソ連も限定的なダメージを受けるも、計画経済が有効に働きむしろGDPは倍増した。世間のインテリ階級、特にイギリスの上流階級はソ連の社会主義を絶賛し、イギリスの採用する資本主義を批判した。彼らはのちにソ連側のスパイとして暗躍することになる。



イギリスの上流階級がスターリンをインタビュー


今回は映画化された「宇宙戦争」でもおなじみのイギリスのSF作家、H・G・ウェルズがスターリンをインタビューした内容を和訳した山形浩生先生の記事から、興味深いやり取りを一部抜粋して紹介する。全文はブログ記事を参照いただきたい。



今回は全文を読んで貰う前に、ざっくりとした内容のおさらいを書きたいと思う。ウェルズはイギリスのインテリ階級で、当然資本家(まあ、小説家だが)の役割を担っている。恐慌にあえぐイギリスをインテリの力で救うべく、諸国を訪問している。アメリカでうまくいっているらしいニューディール政策を見てきた。ルーズベルトの政策はケインズ経済学に基づいて強力な財政出動を行っているらしく、社会主義的だがたしかにうまく言っているらしい。今回はソビエト連邦で成功している政策、計画経済政策の勉強と国民全員が幸せになれるという社会主義の空気を吸うべく、スターリンを訪問した。1934年7月。スターリンはすでに幹部粛清を始めている。


会話は終始知的だ。実際に読むと分かるが、スターリンが一枚上手で、ウェルズは途中焦って自分の論点を箇条書きで述べたりしている。ウェルズは社会主義をあくまで資本主義形態の派生の一つとして、インテリのちからを借りて部分的な計画経済を行っているとのんきに考えていたのだが、スターリンは全く違っていた。インテリこそ労働者の奴隷になるべきであり、知識人など不要。本来は労働者が自分の幸せを追求すべきであり、財産はすべて共有、旧体制の人間はすべて過去の体制に固執するのでみな殺しだ、くらいまでインタビューで述べている。


スターリンはインタビュー中である程度譲歩する。ルーズベルト大統領のニューディール政策やフォードの組織家としての能力には一目置いている。だが決して存在を認めることはない。あくまで私有財産を持つ時点で資本家が労働者をいじめる構図が変わるはずなどないのであり、やはりすべて粛清しなければならない存在なのだ。


最後のスターリンの言葉が恐ろしい。「自由な意見を尊重する風土を構築するため、国民に自己批判を行わせています。」これは決して自由な意見を尊重するという意味ではなく、スターリンが認める思想以外は認めない、という洗脳を指している。ウェルズは気づいていたのだろうか。


気軽に労働者の革命を許すと、新たないびつな体制が構築されるだけである。私個人の意見としては、選挙で意思を表明するか、自身が政治家になるか、ロビー活動を行うことで、民主主義の制度を活用しきることに限ると思う。あとはイスラム教の喜捨やアメリカの寄付文化が称賛されるような風土があれば、あるべき形の資本の再分配が行われるのだが。


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