【経営行動】第4章 禁酒法に見る、人間の合理性の限界6つ。
経営行動における合理性の限界を個人の観点と組織の観点から説明。こうしてみると人間は合理性なんて概念とはかけ離れてるんだが。
【経営行動】第4章 禁酒法に見る、人間の合理性の限界6つ。
経営行動における合理性の限界を個人の観点と組織の観点から説明。こうしてみると人間は合理性なんて概念とはかけ離れてるんだが。
経営行動のシリーズ第4章である。すべての章の記事はこちら。
今回はいよいよサイモンの本領発揮である。人間の限定合理性について、健康増進に対する禁酒法というアプローチの副作用の問題を例に解説する。そもそも組織で意思決定を行うことは難しい。個人でも難しいのに、組織で行うなんてもってのほかである。
サイモンは人間の限定合理性については第4章の知識や構造上の限定合理性、第5章の人間の心理における限定合理性に分けて紹介している。最近話題の人間の心理学とか行動経済学の話(プロスペクト理論やゲーム理論)は次章になる。
アメリカ世紀の失策に、禁酒法というものがある。映画「アンタッチャブル」でも有名な、シカゴマフィアといえばこの人、アル・カポネも密造酒の販売で一財を築いた人物である。シカゴという町は地下室が多いのだが、これは禁酒法時代の密造酒やバーの名残がそのまま残っているからだと言われている。実はディズニー生まれの地でもあり、ディズニーシーのあるエリアも興味深いエピソードがあるが、、これ以上シカゴのあるあるを言ってもしょうがないので本題に戻す。
問題は手段目的ツリーを利用すると分かる。禁酒法は健康の問題を解決するための手段だったが、副作用をもたらした。そう、治安の悪化だ。
禁酒法じゃなくても良かったのだ。一般的な方法として、酒税を引き上げるという方法もあるはずだ。まあ、実は健康増進の他に当時ドイツ人に独占されていたビール産業を崩壊させたいという意図もあるっちゃあるんだが、複雑になるのでここでは割愛する。
健康増進を目的としていた施策は、汚職とマフィアの台頭をもたらし、更にアルコールを飲むことは人権問題である、という提起まで行われた。結果禁酒法は廃止されたのだが、民主的なプロセスを経て作られたものであり、組織の意思決定のミスがもたらした結果である。問題の核心は、禁酒法を設定した時に、副作用まで見通して意思決定ができなかったからである。
人間の限定合理性をポイントにまとめると6つになる。
一覧にすると、人間がいかに非効率な存在か考えさせられる。個人では知識の偏在の克服は難しく、組織でカバーしようとすると集団行動時の弊害や感情の問題が訪れる。大企業だといかに意思決定が複雑化するかが想起されるだろう。
ではAIならば限定合理性を乗り越えられるのか。意思決定の検証や集団行動時の問題はコンピューターが克服できそうだが、将来の副作用の予期まで正確に行えるだろうか。このポイントは機械学習用語の汎化性能というのがキーワードになる。汎化性能とは将来に渡っても正しい予測ができることを担保する指標で、多くの研究者が汎化性能を出すために交差検証など様々なアプローチを検証している。現状シンプルな売上予測や広告費の最適配置であれば可能だが、例えばオリンピックの経済波及効果など、おおよそ計算が複雑なものに関しては未だ十分な性能を発揮できているとは言えない。また、時間の影響は時系列分析という学問が適切なアプローチ方法を示しているので、興味がある方は調べてほしい。
経済波及効果やバタフライエフェクトなど、予測を超えた直観が求められる領域では、人間の推論に頼るポイントが残されている。しかし意思と感情を持つ人間が邪魔な領域では、AIに作業を任せてしまったほうが良いだろう。
iPad ProとApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も 550 くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結する。