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【経営行動】第9章 能率の基準。貨幣や時間以外にもある価値。前年度踏襲など経営ではない。
ざっくり言うと
- 経営行動の第9章。組織の価値を図る能率の話。貨幣と時間以外を考える難しさ。
- 営利組織と非営利組織・公共組織の能率の違い。消極価値と積極価値とは。
- 経営分析における要素変換の4段階と、だめな予算案の例を紹介。
第9章 能率の話。
今回は、第8章。コミュニケーションと訓練。すべての記事の目次はこちら。
- イントロダクションと第1章 組織の解剖図
- 第2章 既存の経営理論は組織のいち側面を切り出して解決しようとしているだけ
- 第3章 それは事実ですか?意見ですか?
- 第4章 禁酒法に見る、人間の合理性の限界6つ。
- 第5章 経営決定の心理学。課題を直観で解くか熟考して解くか。
- 第6章 組織の均衡。意識高い系社員と普通の個人の人生の目標をすり合わせて、組織を急成長させるには?
- 第7章 権限の役割とうまく人を動かす方法について。説得?提案?命令?
- 第8章 コミュニケーションと訓練
- 第9章 能率の基準
- 第10章 忠誠心と組織への一体化。個人の忠誠心はいかに育まれるか。
- 第11章(終) 組織の解剖学。
今回は、能率の話である。個人的な仕事術としても良く言われる内容だが、組織全体として能率を追求する場合の話を書く。能率を考えるには、営利組織では金銭と時間で計測し、投入 < 産出の維持を絶対として考えればよいのでシンプルだが、人間はそこまで単純ではない。気分や組織への貢献感、その他もろもろが作用する。さらに非営利組織だと事態はより複雑になる。貨幣がないと組織は維持できないのに、貨幣を意識しないからだ。むしろ組織の目的が本来の意味で達成されているか否か、が重要になる。脱炭素を目指す組織ならば、炭素の排出量を測定する必要がある。
営利組織と非営利組織・公共組織で異なる能率の定義とは
サイモンによれば、組織に応じて能率は変わる。営利組織の場合は下記だ。
営利組織の場合、能率は時間と貨幣という消極価値により測定される。意思決定においては、選択肢における産出/投入比がベストなものを選択すれば良い。
一方、公共組織や非営利組織は下記だ。
非営利組織や公共組織の場合、貨幣や時間よりも組織自体の目的が達成されているかが重要になる。これを積極価値と呼ぶ。公共組織だと特に、運営が構成中立であるか、所有権を分配する場合に公平か?などの問題が発生する。
では営利組織ならば貨幣と時間だけを追求すればよいのか?そんなことはない。人間としての産出/投入比はやりがいや福利厚生によっても決まる。最終的な成績を時間や貨幣で計算するのは良いが、貨幣だけを見ていると潜在的な将来利益を逃すことになりかねない。営利組織でも適切な組織目的の設定が重要だ。
能率を意識しながら選択肢を判定する上で、注意点がある。先程選択肢を産出/投入比で判定すると書いたが、残念ながらこれは自然科学ではないので、産出と投入の相関関係が一定でない。自然科学だとエネルギー保存の法則という絶対性のもと、いくら投入するといくら産出されるかが計算できる。一方経営における選択肢は近似こそできても正確に測定できるわけではない。あくまで他の選択肢との相対評価になることに注意したい。
経営分析における要素変換の4段階と、だめな予算案の例
実際に能率を測定するために、経営判断と結果はどのように要素変換すればよいのか。サイモンはご丁寧に、経営組織における要素変換の4要素を整理してくれている。
経営における組織目的の達成具合を測定するためには、下記の要素を確認する必要がある。目的の達成を支える広告効果やシステム構築、研究や営業の遂行具合の確認、努力の投入具合の確認、更には貨幣や時間の消極価値コストの投入具合の確認である。この内最も難しいのは経営的遂行における諸要素の確認である。組織目的を達成するためのキー要素を多変量解析する必要がある。 よくKPIマネジメント、と呼ばれている産物だ。
ソフトバンクの孫正義氏は、ヤフーBBのモデムを無料で配るという作戦の時に、どこでいくらでだれが配るか、という多変量解析を行って成果を最適化していた。側近で多変量解析できないものは去れ、と言ったほどである。KPIを設定する力も大事だが、寄与度も測定してあげる必要がある。よってエクセルで多変量解析を行うべきだ。詳細は下記の書籍「孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術」に詳しいので、一読してみることをおすすめする。多変量解析はエクセルで出来る。
だめな予算案のパターンとは
組織目的の設定が論理逆転する状態が、だめな予算案である。組織の目的を設定し、そのために必要なものをブレークダウンするのが基本だが、大企業や公共組織では前年度踏襲、などの悪い慣習がはびこりやすくなる。サイモンは下記4つをだめな予算案のパターンだと指摘する。
- 給料と職務から逆算する。
- 前年度予算を正当化する。
- 選挙や派閥闘争などの外部性の制約を受ける。
- 個人的な私欲が入り込む。
また、予算を組む場合に正当化されやすいものがあることにも注意が必要だ。ホワイトカラーの人員削減は好例だ。彼らは事業企画の肝となるので、重要な能力を持つ人間は組織に残す必要があるが、往々にして早期退職で辞めるのは有能で、無能だけが残りがちになる。組織全体として、長期的な産出に多大な悪影響を及ぼすため、気軽にホワイトカラーを削る選択を取ってはならない。
だが実際、日本ではホワイトカラーの人員削減が進んでおり、大失業時代から社会不安を招く可能性がある。大失業時代とスターリンやヒトラーと絡めて書いた記事が別の記事としてあるので、興味のある方は読んでみてほしい。
余談(ごんじっちメモ)
iPad ProとApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も550くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結する。