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【売れるもマーケ当たるもマーケ】1994年のマーケ元祖本。過ちは繰り返されるのか、今も通ずる22則を一挙紹介。
ざっくり言うと
- マーケティングの終わりなき旅。売れるものが良い商品だが、ポジショニングの原則を守らないと効く技も効かない。
- 1994年の古典的マーケ本。ポジショニングの大家が語る22則一覧。
- 興味深い原則を一部抜粋して紹介する。梯子の法則と犠牲の法則、成長促進の法則。
マーケティングの終わりなき旅。売れるものが良い商品なのだ。
マーケティングを追い求めるエンジニア、それがごんじっちだ。マーケティングに関する知識は他の書評でも紹介しているので、ぜひ見てみてほしい。
マーケティングは商品の売れ筋を左右する重大な要素だが、詳しい人でもマーケティングの原則を失念してついつい商品の展開を失敗することがある。データ分析で着実な勝利を握る事例もあれば、ユーザーにささる商品を一人で構築して大ヒットしてしまったような事例もあり、なんともとらえどころがない。
最近だとデザイン思考やジョブ理論が有名だが、古典的なマーケティングの原則を失敗していたのでは、効くはずの技も効かない。マーケティングにおけるポジショニングという領域を構築した第一人者のコンサルタント、アル=ライズ/ジャック=トラウトの本を、今回紹介する。往年のマーケ本であり、一つ一つの言葉が刺さる。アキュラやトイザらスなどのプレーヤーが最新事例として紹介されており、懐古的にも楽しめる。
1994年の古典的マーケ本。22則を紹介。
法則にしては結構多いが、22則を一気に列挙してしまおう。点検しやすい明瞭な書き方で法則が紹介されている。
- 一貫性の法則。2番目に高い山みたいな話。1番手しか覚えられないし、企業名が一般名詞や動詞になるのを目指そう。スコッチテープ、バンドエイド、サランラップはいずれも社名だが一般名詞になってしまっている。
- カテゴリの法則。1番になるカテゴリを作成してしまえ。音楽のジャンルは3→20くらいまで増えてそれぞれトップがいる。ライトビールやノートパソコンなど。
- 心の法則。ユーザーの印象がこびりついているので、印象を変えたいならば圧倒的な一撃が必要。ゼロックスは印刷機で有名だが、もともとPCの生まれたパロアルト研究所を持っていたのでPC事業にも果敢に参入を試みたが、イメージが合わず大失敗している。
- 知覚の法則。ユーザー一人ひとりが世界観を持っている。ホンダのアメリカ高級車ブランドのアキュラ、キャンベル・スープなどがクールや美味しいという知覚を保持しているブランドだ。
- 集中の法則。見込み客にはただ一つの言葉を植え付けること。車といえばベンツ、宅配ピザといえばドミノ・ピザ、みたいな。
- 独占の法則。イメージを独占しよう。マクドナルドにファーストフードのイメージがある以上、バーガーキングは速さで勝負するのではなく、肉のジューシーさといった別の価値を訴求すべきだ。
- 梯子の法則。ユーザーは各カテゴリで仮想ランキングを持っている。自分の商品特性と立ち位置を意識しよう。レンタカーといえばハーツが1位、エイビスが2位なのだ。会計ソフトならばフリーかマネーフォワードだ。
- 二極分化の法則。自由競争は長期的には2頭の競走になる。3位は生き残れないと思え。アメリカの自動車メーカーも100社→2社に集約された。
- 対立の法則。2位プレイヤーは、1位の逆を追求すべきだ。海外ウイスキーが流行った時は国産ウイスキーを訴求しよう。バーガーキングもマクドナルドとは逆の訴求をしよう。
- 分割の法則。時が経つにつれ、カテゴリは徐々に細分化されていく。自動車カテゴリでホンダは高級車ブランドとしてアキュラを別で出した。
- 遠近関係の法則。マーケティングはそもそも効果が出るまで時間がかかるので、割引クーポンを出しすぎて短期的な利益を追求して長期的に破滅するようなことをしてはいけない。
- 製品ライン拡張の法則。当たったブランド名を利用して他の商品にも付けたくなるが、イメージの安売りにつながるので絶対やめるべきだ。ハインツのケチャップが出したマヨネーズは誰も買わない。
- 犠牲の法則。集中すべく、他のカテゴリはライバルにくれてやれ。フェデラルエクスプレスは翌日配送に特化し、国際郵便はDHLにくれてやった。百貨店インターステイトは倒産時に玩具が売れていたのでトイザらスとして業態を切り出した。
- 属性の法則。あらゆる属性はネガティブに映るが優れた側面を持つ。歯磨き粉において薬感は嫌われて美味しい歯磨き粉が増えていたが、あえて薬味を強化して殺菌感を出すことも出来る。
- 正直の法則。ネガティブな面を素直に認めると、ユーザーは応援したくなる。レンタカーのランキング2位はエイビスだが、「エイビスはナンバー2だけどがんばります」宣言でかなり追い上げた。
- 一撃の法則。正攻法は無理。奇襲しよう。ノルマンディはドイツ軍に取っては絶対に上陸できないほどの最悪な立地だったが、まさかの上陸で敗北を喫した。アメリカのGMは日本車に小型車を取られ、ドイツ車に高級車を取られた。
- 予測不能の法則。将来(5年以降とか)はどうせ予測しても当たらないので、優れた短期計画を構築し試行錯誤したほうが良い。ドミノピザは将来計画を作るのではなく、宅配に特化した。
- 成功の法則。成功したとしても、ブランド名だけで売れるわけではない。
- 失敗の法則。失敗を学習と捉えて再試行ループを早く回そう。ウォルマートなど。
- パブリシティの法則。マスコミに出る必要がある時は、たいてい調子が悪いときだ。
- 成長促進の法則。一時的な流行にするのではなく、継続し定着するトレンドにしよう。
- 財源の法則。結局資本力。金がないなら離婚するか結婚するか、フランチャイズでもいいからどうにかしなさい。
特に過ちを犯しがちな法則を3つ次章で紹介しよう。梯子の法則と犠牲の法則、成長促進の法則だ。
見落としがちな重要な法則を紹介。梯子の法則と犠牲の法則、成長促進の法則。
梯子の法則
まずは梯子(はしご)の法則だ。これはユーザーが商品カテゴリごとに想起する選択肢、更に言えばランキングがあるという話である。ランキングの数は商品カテゴリによって異なる。例えばシャンプーや歯磨き粉の選択肢は多様だ。一方で生命保険や自動車などは選択肢が限られてくる。自分がどの立ち位置にいるか、そもそも認知されていないかを確認しよう。マーケティングの専門用語ではこれを純粋想起とか、エポークトセットと呼ぶ。
犠牲の法則
大企業でやりがちなミスは犠牲の法則を破ることだ。大企業はなまじ資本力があるのであらゆるサービスに手を出したがる。だが実際は妙なクオリティのサービスが並び、ユーザーに刺さらず終わる。
あるいは自分がチャレンジャーの場合も重要だ。あえてライバルにマーケットを譲り、自分がライバルに絶対参入されないマーケットを構築する。米国の倒産した百貨店、インターステイトは、復活の時に百貨店ではなく、売れずじだった玩具専門店を考案した。現在のトイザらスである。
成長促進の法則
最後は成長促進の法則だ。一度当たりを引くと一気にサービスが認知され利用されるが、ここでマーケティング巧者は企画を出しきらない。継続してヒットするコンテンツにするために、ライブイベントや続きの企画をある程度出し渋るのだ。エルビス=プレスリーのマネージャー、コロネル=パーカーは、レコードがバク売れした時に、あえてライブイベントをやりすぎないように注意した。結果ライブイベントのスケジュールが発表されるたびに話題になったのだ。バービー人形もキャラクターを定着させるためにコラボ商品などを軒並み断った。定着するまで流行に水を差していったのである。
余談(ごんじっちメモ)
iPad ProとApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も550くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結する。