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【経営行動】第10章 忠誠心と組織への一体化。個人の忠誠心はいかに育まれるか。


ざっくり言うと

  1. 経営行動の第10章。組織の効用を圧倒的に高める個人の忠誠心。
  2. 個人が組織に一体化するメカニズムを紹介。
  3. 一体化しても良いけども、副作用もある。


第10章 忠誠心と組織への一体化の話


今回は、第10章。すべての記事の目次はこちら。


今回は、個人の忠誠心を考える。組織の効用を最大化する時に考えがちなのはコスト削減をねらった効率化だが、実は個人の忠誠心を上げたほうが効率化になることがある。組織の目標を個人が明確に捉えて実行できるように施策を打ったほうがメリットがあるのだ。


個人と組織の間には2つの微妙な緊張関係があると「経営者の役割」などで有名な経営学者バーナードは指摘する。


  1. 個人が組織に努力を投入するか否かを決める。
  2. 組織が決定し、個人に組織への一体化促すことで決定に従属化させる。

このうち、1の心理状態は個人の視点から主に第6章で議論している。今回は組織の経営者の視点から、個人の忠誠心をうまく組織に利用する方法と、組織への一体化の弊害を紹介する。



個人が組織に一体化するメカニズム


サイモンによれば、個人は組織への一体化として下記のメカニズムが働くという。


  1. 組織に対する個人的な関心が、組織への一体化を自ら促すことがある。例えば、名声やプライド、友情や給料が誘因になる。
  2. 私経営心理の移転が行われる。例えば個人の気持ちが拡大し、自分の部署の社員を我が子のように大事にし始めたり、グループ愛を持ち始める。
  3. 注意の焦点が限定される。組織への一体化による焦点の固定が、問題をフレームワークで自動的に解くように促す。しばしば他の可能性をフラットに考えられなくなる。

組織の目的は目的の達成度や能率で測られるべきものであることは第9章の能率の基準で記載済みだが、組織への一体化は毒にも薬にもなる。私経営心理の移転や注意の焦点の限定はしばしば毒として働きやすい。我が子が可愛くてだめとか、問題の解き方がユーザーファーストではなくなるとか、よく聞く問題が起きる。次節で深堀りしよう。



組織への一体化の弊害


組織の一体化の弊害は下記のように整理される。


  1. 高度なレベルの組織目標においては、能率の測定がしばしば難しく、いくら組織への一体化が完了していたとしても個人の能力に依存してしまう。
  2. 組織が与えてくれる問題の関連情報しか参照せず、他の要素を見落としたり、優先度を逆転させてしまったりする。
  3. いくら組織への一体化を進めてもコミュニケーション上の不完全性は拭えない。
  4. 組織への一体化が派閥への一体化へと転化し、集団同士のコンフリクトを起こすことがある。

いくらメリットがあるからといって組織への一体化を促すとしても、考慮すべき影響が多数あることに気づくだろう。しかもいずれも防ぎがたい。認知すら難しいものもある。


なぜこうも人間は扱いにくいのか。原因は、人間がそもそも集団への帰属意識を報酬とする社会性を備えていることにある。人間の社会性は、競争よりも協調を志向する利他主義的な思考ができることから生まれている。経験則として、完全競争状態、すなわち自然淘汰の状態よりも種の保存として有利なことを理解しているのだ。だがいくら集団への帰属意識があるとはいえ、集団同士わかり合えなければコンフリクトを起こす。人間が他の種の動物と異なって厄介な点は、建前上同じ組織で同じ方向を志向していても、裏では個々の集団でコンフリクトを起こせる複雑な社会性を備えているところにある。


組織の経営者としては、組織の一体化を促しつつ、粛々と副作用を検知して消していく地道な作業が必要になる。派閥を活かすという考え方もある。事実派閥のおかげで一定の意思決定がスムーズに進むのが、大企業の特徴である。



余談(ごんじっちメモ)


iPad ProApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も550くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結する。