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【経営行動】第3章 それは事実ですか?意見ですか?


ざっくり言うと

  1. 経営行動の第3章。情報の扱い方の話。事実(事実判断)と意見(価値判断)を整理した。
  2. 戦場における不意打ちの米軍マニュアル。
  3. 専門化が価値判断をサポートする時の注意点。日本学術会議の話にも聞こえる。


第3章、組織のおける情報の取り扱いについて。


経営行動のシリーズ第3章である。すべての章の記事はこちら。


今日は多くのビジネス書でもおなじみの内容である。情報を事実と意見に分けて判断し整理するというものである。ビジネス書だと上司向けに部下の話が「事実なのか意見なのか」を分けて聞くと良いみたいな話がよく書いてあるが、サイモンも50年以上前から同じような話をしていたのである。


19世紀のイギリスの首相ディズレーリは、「世の中には3種類の嘘がある、嘘、大嘘、そして統計だ」と述べた。不正な統計は誤った意思決定を招く。企業内外でも誇張表現や誇大広告は後をたたないが、自分を騙して意思決定をするなど、愚の骨頂である。サイモンは、情報の扱い方にとにかく気を付けろと本章で繰り返し説く。



不意打ちマニュアル


アメリカ陸軍の歩兵戦場マニュアルには、「不意打ち」について下記のように記されている。


不意打ちは、攻撃を成功させる不可欠な要素である。不意打ちを成功させるには、攻撃の時間と場所を秘密にすることが必要である。
経営行動(ハーバート=サイモン/ダイヤモンド社)

このマニュアルを例に、サイモンの情報整理を説明しよう。サイモンによれば、意思決定の材料となる情報は事実判断と価値判断に二分される。事実判断とは、誰が見ても同じ答えとなる事実を指し、その情報の真偽について正しいか正しくないかを判断する。一方価値判断とは、主観的な意見や考え方を含む情報を指し、その情報をもって「そうであったほうが良いか否か」を判断する。アメリカ陸軍の例では、情報は下記のように整理できる。


  • 不意打ちをせよ!(価値判断)
  • 不意打ちを成功させるには、攻撃の時間と場所を秘密にすることが必要である。(事実判断)

不意打ちをせよ、というのは、直接は書かれていないが、「不意打ちは、攻撃を成功させる不可欠な要素である。」とマニュアルに書かれていることから価値判断の命令だと読み取れる。つまり、不意打ちをしたほうが良い、という価値を含んでいる。一方、不意打ちの成功条件に関する記載はおそらく事実であり、これは誰が見てもそのとおりと言えるものであり、事実判断である。


組織においてこの2種類の情報伝達を適切に選り分けて行えるかどうかが重要である。


事実判断は客観的で、組織においては2人とも同じ答えを導けなければならない。もし異なるならば、それは事実判断と言えないか、事実と判断するのに必要なスキルや知識が不足しているか、判断をしているどちらかが嘘をついているかのいずれかであろう。


いっぽう価値判断は人によって答えが変わりうる以上、組織としては「与件」として全員が同じ判断をできるようにしなければならない。組織とは個人の集合体であり、組織は能率の最大化に向けて組織の目標に適合した意思決定を行うことにある。価値判断は主観を含むので、価値判断をいかに組織の目標に適合した状態で判断できるようにするかが鍵である。実際、アメリカ陸軍はマニュアルと言う形で不意打ちの重要性を各メンバーに伝えきっているわけである。



専門化のサポートは諸刃の剣


事実判断は誰にとっても可能かといえば、そんなことはない。法律関連やマーケティング、株式など、専門分野は意思決定者自身が判断できないこともあるだろう。その場合、専門家の活用が検討される。


専門家とは文字通り専門知識で事実判断をサポートする役割を持つ。サポートする相手は企業の社長であったり、政府であったり、重要案件の営業担当であったりする。


注意すべきなのは、専門家とはあくまで事実判断のサポートに過ぎず、意思決定者が決めるべき価値判断には関わらないのが原則だということだ。だが世の中には、越権行為とでも呼ぶべき腐敗が歴史上をみても現代を見ても多く存在する。


典型的な例は「日本学術会議」である。長年政府の公認機関として政府の意思決定をサポートしてきた専門家だが、近年は特定の左翼思想に染まったメンバーやスパイ関連の出自が怪しいメンバーが増えており、事実判断を超えて価値判断にまで踏み込んでいるケースと言える。


EV関連でも中野弘道氏が政府の意思決定において暗躍した疑いが持たれており、興味深い。一般企業でも特定の外部のメンバーによる利益相反行為や特定の派閥の越権行為はよく見受けられるだろう。派閥の問題については、権限について取り上げる後の章でまた記載したい。いずれにせよ、組織においてはあらゆる情報を事実判断と価値判断に分け、内容の把握と各メンバーへの伝達の整流に務めるべきである。



余談(ごんじっちメモ)


iPad ProApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も 550 くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結する。