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【経営行動】第2章 既存の経営理論は組織のいち側面を切り出して解決しようとしているだけ


ざっくり言うと

  1. 経営行動の第2章。シリーズ2回目。
  2. 経営格言の問題点。専門化?命令の一元性?上司の統制人数を減らす?目的別、プロセス別、顧客別、場所別組織?全部トレードオフを考えなさい。
  3. 結局、経営の目的は能率の最大化。


第2章は既存の経営格言をぶった切り


経営行動のシリーズ第2章である。イントロダクションと第1章は別記事にて。本書の価値が垣間見える。


すべての章の記事はこちら。


ビジネス書には、「マニュアルを作ると良い」「部署の階層をなくそう」「全員を社長の視点で考えられるようにしよう」などのいわゆる経営格言が書かれている。経営格言は書物から得ることもあるし、経験則的に得られることもある。サイモンは、理論の統合的なモデリングを求めるので、経営格言を次々に論破してしまう。実にいやらしく、細かくトレードオフを見極めていく。


最近サイモンの文章ばかり読んでいるせいか、文章の表現する意味の厳密性ばかりが気になるようになった。普通の文章を見ていると定義不足を文脈から補う必要性があり、自分の中で補った内容をもし相手に確認するならば、いくら時間があっても足りなくなるだろう。なので自分で湧いた疑問を自己解決してあんまり相手に投げないようにしている。文脈でなんとなく納得する、というの行為は多くの人が自然に行っているものであるが、だんだんそれができなくなる。


だが利点もある。どんどんプログラミングにおけるデータ定義がうまくなるのだ笑。システムの科学の記事世の中の多くの会話は定義不足で成り立っており、それはシステムには全く解読できない。サイモンも時代が時代ならば、エンジニアだったのだろう。まあ、すでに経営行動が十分複雑なシステムだと思うので、経営学によいシステムの遺産を残してくれたものだと思う。



経営格言みんな考慮不足?


サイモンは既存の経営格言にうんざりしていた。下記にしめす法則は、いずれも経営を改善する時の基準に過ぎず、法則それ自体が改善の原則になるわけではない。格言によっては、格言同士矛盾をきたしているものもある。


職能や場所の専門化


典型的な改善方法は、経営における職能(営業やマーケティングなどの役割)、場所ごとの専門化である。


同じ場所に営業やマーケティングを集約すればコミュニケーション効率が上がるのは当然だ。一方で、営業部隊とマーケティング部隊を同じ場所に集約すれば、ノウハウの共有が進むので経営の効率が上がる。当然、どちらかをすればどちらかが向上するが、もう一方の利点は失われる。経営格言で述べる場所や職能の専門化は、それ自体基準でしかない。ありがたそうにこの格言を受取る意味はないとサイモンは述べている。


命令の一元性




これは上司と部下の関係性の話である。二人の上司から指示されるより、一人の上司から指示されるほうが効率が良いということだ。例えば、自分が営業だとして、契約を結ぶとする。法務のことは法務に聞いて、ということで営業の自分の上司以外の法務の上司の指示を受ける。もし営業の上司が「この契約をなんとしても巻きたい」と言っていて、法務の上司が「これはちょっと厳しい」という判断を下した場合、どうするか。上司同士が調整してどちらかが降りない限り、意思決定は進まない。この間、部下は本契約について遊休することになる。保留状態が常態化している大企業はよく見かける。外部コンサルタントが課長代行になる会社も近年増えている傾向だ。よく、社員が使えないと嘆く人がいるが、それは組織構造の問題が解決できていないだけだったりする。つまり人の問題ではなく、もっと根深い問題、疲弊しやすい構造の問題だったりする。


簡易的な解決策として、揉めたらどっちかの意思を尊重する、というものもあるが、これは暫時的な解決策であり、そもそも保留状態をつくらないのが良いのではないか、という意見も出てくるだろう。そのとおりである。スタートアップが大企業との競争で打ち勝つ基本的な原則は、意思決定スピードで市場適応度を高めるという方法である。たしかに、テスラはメルセデス・ベンツが10人で1ヶ月かけた作業を、5人3日で終わらせたという話もある。圧倒的な意思決定スピードは、個人に意思決定を委ねることで達成できるわけだが、当然リスクも有る。後の章で紹介しよう。



上司の統制幅を狭くする


上司の部下の人数を減らす方法である。8人部下がいれば、課長代理を2人たてて、統制幅を2人にする。あいだに課長代理やバイトリーダーを挟むことによって実現されるわけだ。だが、これもトレードオフがある。言わなくてもわかるが、これは組織の階層を増やすことになり、意思決定スピードがその分遅れる。つまり、統制幅の大きさも経営の効率を考える上では、いち基準に過ぎない。



目的別、過程別、顧客別、場所別組織


最初の専門化とかぶる内容だが、上記のいずれもトレードオフを抱える。どれかを優先すれば、どれかが失われる。



結局、経営の目的は能率の最大化


よくある経営格言がただの基準に過ぎない、として、では経営の目的は何だったのか、とサイモンは振り返る。サイモンによると、目的とするものは能率を上げることであり、今までの格言はいずれも能率を上げるために存在する部分的な対応策であり、解決するには能率の測定とその向上が必要なのだ。つまり経営格言は問題をシンプルにしすぎていると言いたいわけだ。


サイモンの述べるような能率は、具体的にはなんなのか。それは、希少の手段を用いて組織の目的を達成する効率を上げることである。最適な手段を短時間で見つけて実行するために、ありとあらゆる物事を最適化していく。


では、何を最適化するのか。一人の場合は、「正しい意思決定をする能力」と「正しく実行する能力」が要素である。組織の場合、複雑になる。複数人で協力して選択肢の洗い出しと意思決定、実行するためには、下記が必要だ。


  • 人間と組織が抱える合理性の限界を克服すること
  • 心理学的なバイアスを除外すること
  • 組織の目標と個人の目標をすり合わせておくこと
  • 上司が部下に適切に行動させるために権限が行使でき、部門間の対立などの権限の障害を取り除くこと。
  • 組織内のコミュニケーションを整流すること
  • 金銭価値や時間価値、それ以外の社会的価値を適切にリソース管理すること
  • 忠誠心を保たせ続けること

各項目、章立てて説明しないと解説しきれないので、次回以降の記事で紹介していこう。



余談(ごんじっちメモ)


iPad ProApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も 550 くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結する。