【システムシンキング】なぜメルカリは成長を加速させてきたか?

システムシンキングの因果ループ図でメルカリをモデル化する。すると、アマゾンの成長ループに見えてきた。

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ざっくり言うと

  1. システムシンキングの因果ループ図はビジネスモデル分析に応用できる。
  2. メルカリの購入者・出品者の増加は巧妙な自己強化ループが働く。
  3. メルカリの成長ループは半永久機関になりやすい。アマゾンの成長ループを思い出す。


因果ループ図によるビジネスモデル分析


久しぶりにシステムシンキングである。みなさんは忘れたと思うが、僕はシステムシンキングにはまっており、最近は定量モデル化に取り組んでいる。


なぜハマっているかといえば、今までなんとなく感じていたバタフライエフェクトを、モデル化することでいろんな隠れた事実に気づくことができ、とっても面白いからである。

バタフライエフェクトとは、日本だと「風が吹けば桶屋が儲かる」のことわざで知られ、非常に小さな出来事が徐々にとんでもない大きな現象を引き起こすことになる現象を指す。なぜバタフライエフェクトかといえば、ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスではトルネードになるという通説から来ている。

因果ループ図は実はビジネスモデル分析に非常に効果がある。なぜなら人は物事の作用と副作用をあまり分析できていないままビジネス上の意思決定を行うことが多く、ロジカルシンキングによる要素分析はできても、システムシンキングによる要素間分析は出来ていないことがほとんどだからである。単純に「ふつうの奴らの上を行ける(ポールグレアム風)」から、効果が発現すると思われる。 image 実践システムシンキング(湊 宣明/KS理工学専門書) より引用


因果ループ図自体を知らない読者の方は、ぜひ過去記事を読んでから本記事に戻っていただたい。以下のメルカリの因果ループ図の意味がより伝わるのではないかと思う。
【システムシンキング】なぜ、飲み過ぎてしまうのか? なぜ、交通渋滞は解決されないのか?
【システムシンキング】なぜ、仕事チョットデキル人はやめてしまうのか?



メルカリの購入者と出品者を増やす作用をモデル化


ということで、早速メルカリの成長を因果ループ図で表現したものが下記である。


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筆者作成


経済用語で一言で言えば、ネットワーク効果だよね、の一言で片付けられがちな話だが、システムシンキングでは構造を正確に表現することができる。正直、割と時間がかかったが笑

ネットワーク効果とは、ものやサービスの価値がそこに紐づくユーザー数で決まるため、ユーザー数が増えるほど価値が上がる効果を指す。フリマアプリであれば、購入者と出品者が増えれば増えるほど、価値が相乗効果で上がっていく。

まず要素を解説しておきましょう。

要素名 説明
購入者DL数 ものを買う予定の人がメルカリをDLした数
購入者数 ものを買う人の数
購入離脱者数 ものを買わなくなった人の数
認知した購入ユーザー数 購入者がクチコミで広めてメルカリDLしようかな、となっている人の数
購入してネガティブなユーザー数 結局購入しなかったり、購入してメルカリに嫌な印象を持った人の数
出品者DL数 ものを出品する予定の人がメルカリをDLした人の数
出品者数 ものを出品する人の数
出品離脱者数 ものを出品しなくなった人の数
認知した出品ユーザー数 購入者がクチコミで広めてメルカリDLしようかな、となっている人の数
出品してネガティブなユーザー数 結局出品しなかったり、出品してメルカリに嫌な印象を持った人の数

次に考慮しない条件は下記である。

  • 出品された商品の質は考慮しない。
  • 出品者が購入者になる、購入者が出品者になるというコンバートは考慮しない。
  • 現時点で他のアプリを利用している、併用するという可能性は考慮しない。

以下は、モデル化したことで得られた4つのループ構造(自己強化ループ)を説明していく。



購入者/出品者のクチコミ増加ループ(図の左側の2つのループ)


購入者DL数→購入者数→認知した購入ユーザー数→購入者DL数のループ
出品者DL数→出品者数→認知した出品ユーザー数→出品者DL数のループ
を指す。 image


  1. {購入者DL数/出品者DL数}が増えると、{購入者/出品者}が増える。
  2. {購入者/出品者}が増えると、クチコミや評判により、{認知した購入ユーザー数/認知した出品ユーザー数}が増える。
  3. {認知した購入ユーザー数/認知した出品ユーザー数}が増えると、{購入者/出品者}が増える。


購入者/出品者の減少ループ(図の右側の内側2つのループ)


購入者数→購入してネガティブなユーザー数→購入離脱者数→購入者数のループ
出品者数→出品してネガティブなユーザー数→出品離脱者数→出品者数のループ
を指す。 image


  1. {購入者数/出品者数}が増えると、{購入してネガティブなユーザー数/出品してネガティブなユーザー数}が増える。
  2. {購入してネガティブなユーザー数/出品してネガティブなユーザー数}が増えると、{購入者離脱数/出品者離脱数}が増える。
  3. {購入者離脱数/出品者離脱数}が増えると、{購入者/出品者}が減る。


出品者増加で購入者が増加するループ(図の右側、ネットワーク効果)


出品者数→購入離脱者数→購入者数→出品者数のループを指す。 image


  1. {出品者数}が増えると、選択できる商品の数が増えるので{購入離脱数}が減る。
  2. {購入離脱者数}が減ると、{購入者数}が増える。
  3. {購入者数}が増えると、出品した商品が売れる可能性が上がるので{出品者数}が増える。


購入者増加で出品者が増加するループ(図の右側、ネットワーク効果)


購入者数→出品離脱者数→出品者数→購入者数のループを指す。 image


  1. {購入者数}が増えると、商品が売れる可能性が減るので{出品離脱数}が減る。
  2. {出品離脱者数}が減ると、{出品者数}が増える。
  3. {出品者数}が増えると、選択できる商品の数が増えるので{購入者数}が増える。


メルカリの成長ループは半永久機関になりやすい


いやー、メルカリの因果ループ図を見ていると、いかに自己強化ループをきっちり育てていくために、UX、クチコミ、認知を徹底的に大事にしてきたかが垣間見えるようである。


ビジネスモデル自体も、自前で自己強化ループを回す必要が無いことも見えるだろうか。自分で営業をして要素を増やすことで回すループが存在しないため、一旦成長のループに入ると首尾よく伸びてくれる。


つまり、メルカリの成長ループは成長ループは半永久機関的であり、一度発動した時のインパクトが強烈なのである。


そしてふと気づく。Amazonの有名な成長ループに成長ループに似ていることに。

image アマゾンとリノベるが実践--お客様の“困りごと”を解消する顧客視点ビジネス(CNET) より引用


Amazonの創業者ジェフ=ベゾスは、起業時にレストランのナプキンに上記の図を描き、これを書いてアマゾンの礎とした。出典が不明で申し訳ないが、メルカリの山田進太朗氏も当時投資家だった小泉文明氏にレストランのナプキンで成長ループ図を描いていた、という話を聞いたことがある。その時描いていた成長ループ図は、ひょっとして筆者が作成したループ図なのではなかろうか。



余談(おすすめ本コーナー)


おすすめデザイン本。ずっと使えるデザインのコツがびっしり。自分もよく利用してます。


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