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【経営行動】第6章 組織の均衡。意識高い系社員と普通の個人の人生の目標をすり合わせて、組織を急成長させるには?
ざっくり言うと
- 経営行動の第6章。組織における企業家の目標と、意識高い系社員の目標、普通の社員の目標はぜんぜん違う。
- 組織の能率を測る基準を再掲。組織目的の達成度が高く、コストの少ない選択肢を選択できているか、から目をそらさない。
- うまい組織目標設定の方法例。YouTubeはKPIを唯一、総視聴時間に設定して組織を成長させた。
経営行動の第6章。個人の思惑が入れ違う中で組織を成長させる方法。
経営行動のシリーズ第6章である。いよいよ折返し地点。議論が興味深い各論へ発展していく。
- イントロダクションと第1章 組織の解剖図
- 第2章 既存の経営理論は組織のいち側面を切り出して解決しようとしているだけ
- 第3章 それは事実ですか?意見ですか?
- 第4章 禁酒法に見る、人間の合理性の限界6つ。
- 第5章 経営決定の心理学。課題を直観で解くか熟考して解くか。
- 第6章 組織の均衡。意識高い系社員と普通の個人の人生の目標をすり合わせて、組織を急成長させるには?
- 第7章 権限の役割とうまく人を動かす方法について。説得?提案?命令?
- 第8章 コミュニケーションと訓練
- 第9章 能率の基準
- 第10章 忠誠心と組織への一体化。個人の忠誠心はいかに育まれるか。
- 第11章(終) 組織の解剖学。
今回は、全員悩んだことのありそうな話、自分の人生の目標と組織の目標のズレを認識しつつ、それでも組織の目標を最大限達成する方法について考える。多くの組織がキャリアアップ面談などを設けているが、正しく機能することは稀だし、個人の本心は面談には現れない。うまく個人のインセンティブを意識して組織としての目標を達成するか、変数と達成すべきことを明らかにする。
わかりやすい例はインテリにたまにいるちょっとうざいやつ「意識高い系社員」がいる。謎に早起きでなにかとスタートアップスタートアップ。昼も夜も常にロジカル。効率重視。ガジェット大好き。仕事が人生。困難は最高の栄養だ、みたいな人である。周りにいると暑苦しい。そして厄介なのは、たいてい社長と目標が擦り合わされているので社長にとっても都合の良い人材だということだ。だからどうなるか、社長みたいなことを同僚や部下に押し付けてくる。うざいことこの上ない。
一方で、普通に暮らしたい社員がいる。そこそこ働き、そこそこたったら結婚して落ち着きある良い暮らしを目指している。趣味にも取り組んで、幸せに暮らす。仕事は生きていくためなので、まあやるけど定時になったら好きなことがやりたい。そんなわけで組織の目標とは大幅にずれていくことになる。
図にまとめると下記だ。
組織とは基本、社員の勤労と賃金ややりがい、名声と権力の交換によって維持されている。普通の社員は安定を求めており、意識高い社員は将来の企業家や支配組織に所属するための成長、名声、権力を求めている。まるで違うエンジンを抱えながら組織を進めなければならないのだ。
組織の能率を測る基準とは?
大きく組織と個人の目標が異なることは理解できたが、ではその上で組織の能率を測る基準は何だったであろうか。第1章でも記載済みだが、再掲する。
- 複数の選択肢が現れた場合、より組織目的の達成度が高い方を選択できているか。
- 選択肢について、よりコストが少なくて済む方を選択できているか。
つまり、目的に適合し、かつコストが少なくて済む選択をいかに取れているかを指している。能率に照らして言えば、社員のことなどお構いなしに命令した通りの行動を取らせればよいのだが、これはまさにモダンタイムス。嫌になるのだ。だからこそ、個人目標と組織の目標を1:1ミーティングですり合わせよう。
うまい組織目標設定とYouTubeのOKRの巧妙さ
組織の能率を考える前に、組織の目標自体がおかしいので組織ごと崩壊する可能性を考える必要がある。目標が間違えると、不正や悪意が横行する。
目標とはなにか。サイモンが説く目標とは下記の定義を持つ。
- 選択肢に対して制約を課すもので、あまたある決定の制約条件を設定し、パレート最適な集合を見つけやすくする道しるべのこと。
- 提示された解が満足が満たすか否かテストするためのもの。
- 提示された選択肢の複数の解を統合し、合成するために用いられるもの。
最初の定義のうち、この内聞き慣れない単語は「パレート最適」であろう。これはなにか一つの要素の効用を下げないと他の要素の効用を上げることができないことを指し、かんたんに言えば最適資源配置のことを指す。マーケティング費用を考える。TwitterとInstagram、google検索のリスティング広告から得られる新規ユーザー獲得者の数は、必ず最適な費用配分がある。どれか一つに肩入れしても、別のチャネルから得られるユーザー数が最大効率で無くなってしまう。
提示された解のテスト、という話は理解しやすいだろう。自分が作業した成果物が組織の目標に見合っているかを検証して、成果物の価値が決まる、という話だ。
最後の話は組織における目標の話に固有かもしれない。組織では目標を部署ごとに分けて行うことになる。営業、CS、人事、R&Dに分かれ目標に向けてなにか解を生み出すのだが、その解を組織の目標にあわせて統合する必要がある。これは難儀だ。社内調整を行う必要がある。その時に唯一照らして正しさを確認できるものが目標になるのだ。
組織の目標に関して、大成功した組織がある。YouTubeである。
YouTubeの優れた目標設定: 4年間で総視聴時間を10億時間に増やす
2014年、実はYouTubeは伸び悩み始めていた。すでに巨大化し売上も伸び始めていたが、Google全体で言えばまだまだの事業となっていた。確かにそれぞれの事業はなんとなくうまく回っているが、なんかうまくはまらない。なんならユーザーが横ばいで若干飽きられている可能性がある。そこでYouTubeの新CEOスーザン・ウォシッキー氏は、シンプルで大胆な組織目標を掲げた(OKRと呼ぶ)。
4年間でユーチューブ・ユーザーの1日あたりの総視聴時間を10億時間に増やす。
ちなみにこれは当時の視聴時間の10倍の目標である。超大胆な目標だ。スタートアップ界隈では有名だが、こうした大胆な目標をOKRと呼ぶ。詳細は「Measure What Matters(メジャー・ホワット・マターズ)」を読んでほしい。経営行動に戻ると、この組織目標は秀逸だ。ユーザー数でもなく、広告売上でもなく、追求するのは唯一つ、総視聴時間なのだ。結果、YouTube社内に存在した余計な社内調整はすべてシンプルになり、「総視聴時間を増やすために」解は整えられることとなった。そして3年後(4年かからなかったのだ!)、総視聴時間は紆余曲折を経て10億時間を突破し、動画マーケットはYouTubeのものとなるのだ。
経営行動に照らして考えると、OKRという大胆な目標の立て方の筋の良さに築くだろう。道しるべになり、出した解が正解か一目瞭然だし、複数間の調整も完結する。僕はとりあえず、組織の目標の立て方はOKRで立てれば正解だと思っている。
余談(ごんじっちメモ)
iPad ProとApple Pencilを用いて各章ごとにメモを書いている。今回は電子書籍ではなく、ページ数も550くらいあるので持ち歩きには不便だ。タブレットにメモしておけば、後で復習するときにはスマホだけで完結する。