【現代経済学の直観的方法】結局、資本主義ってなんなの?

相変わらず天才だった。あの長沼伸一郎が軽妙な語り口で経済学の本質を射抜く。


ざっくり言うと

  1. アフターコロナは、かつて無いほど経済リテラシーが求められる時代である。
  2. 物理数学の直観的方法で一躍センセーションを起こした長沼氏の最新刊。天才的にわかりやすい。
  3. 経済の仕組みから古典派、ケインズ、新古典、貨幣膨張、貿易、基軸通貨ドルまで全部うまい説明でするするわかる。


投資が身近になったアフターコロナ


コロナをきっかけとして全世界が過剰流動性相場に陥っている。


カネが世界中でだぶついており、消費が落ち込んでいるのに投資への熱が収まらない。


第一生命経済研究所エコノミストの藤代宏一氏は、「消費停滞が日本版ロビンフッダーを生む」というレポートで、ボーナスの減額と耐久消費財への消費一巡に伴う消費の減速が一時的な可処分所得の増大を生み、結果として金融市場にお金がなだれこむ可能性を示唆している。



平たく言えば、「ボーナス減ったから減った分投資で稼いでやるぜ」となる世帯が増えるということである。


しかし相場は甘くなく、先に個人投資家が増えた米国市場は9/9現在で機関投資家の利確をきっかけに大暴落を始めた。


機関投資家には個人の考えていることはお見通しだったのである。


しかしこれ以上個人が経済リテラシーの不足を理由にはめ込まれる状況を見るのは苦しいので、経済学をざっと理解できる本をみんなで読んで立ち向かおう。


人々がメシアを望んでいるさなか、明解な説明の天才、長沼伸一郎が降臨する。



長沼伸一郎伝説



長沼伸一郎氏は物理学者で、早稲田大学院を85年に中退後、1年半こもって理論物理の思考にふける。


87年に自費出版で「物理数学の直観的方法(長沼伸一郎/講談社)」を刊行、これが理系学生の間で「あまりにわかりやすい」と話題になり一躍ロングセラーとなる。


以後は独自の研究グループ「パスファインダー物理学チーム」を率いつつ、直観的方法シリーズを続々出版している。いわばいわば特殊な人である。


私が特に天才的だと感じるのは、あまりに上手すぎる表現と例えにある。


読むたびに「ああ、天才が語る発想はこうも面白く、説明はこうも明瞭なのか。私もこうありたいものだ」と感じさせる。


物理数学であれ、統計学であれ、経済学であれ、学問には本質と呼べる概念が存在する。


しかし各学問が膨大な解説書で埋め尽くされ、そのいずれも本質を語ろうと取り組んでいるものの、山の頂にはたどり着けずにいる。


だが長沼氏は軽々到達してしまう。しかもわずか1冊で。不思議としか言いようがない。ここまで蒸留された書籍はお目にかかったことがない。


当然、通常の解説書や論文のような、エビデンスの適切な引用から積み重ねでかかれたものとは一線を画し、長沼氏の書籍は事実より推論で本質に一気に到達する。


これがまた的確だから困る。天才の推論は凡人の汗かいた論理的思考に勝ってしまうのだ。



経済学の本質を射抜く


「4年かかっていた経済学を1週間で理解する」というコンセプトは伊達ではない。


資本主義の存在意義、経済の仕組みから古典派、ケインズ、新古典、貨幣膨張、貿易、基軸通貨ドル、仮想通貨の立ち位置や資本主義の行く末(縮退の世界)まで本当に1冊にまとめきっている。


今回は「なぜ資本主義が経済成長をやめられないのか」について一部紹介する。


それは「金利」というものがあるからである。現在の大多数の日本企業は、大量の資金を銀行から借りている。

企業が借金をする以上、返すときには利子を付けて返すため企業は成長を目指すことになる。これを国家レベルで行うとGDPの経済成長率(3%くらいが妥当)になるのである。


だが年間3%成長とは実はものすごいことである。これは複利であるから、20数年で経済の規模が2倍に拡大しなければならない。事実石油の使用量は経済成長率に比例してものすごい勢いで伸びている。


ここから話は近代戦(!?)に移る。近代戦は総力戦であった。国民皆兵で国家のあらゆる資源を使い果たして戦う。


ところが近代(ナポレオンくらい)までは一日中弾を撃ち続けることなんてできず、補給がくるまでしばらく戦闘が行われないことも多かった。


そう、近代戦が総力戦になれたのは、強力な補給網が生まれてしまったからである。その補給網とは、鉄道の発明である。


鉄道網の拡大がそのまま国家の兵站網となり、一日中弾を撃ち続けることができた。


しかし鉄道網の拡大にはお金がかかる。政府は鉄道網の拡大が戦争のキーポイントであることを認識していたので、大量の資金を補給できる銀行網を構築していった。


その銀行網とは、中央銀行の設立である。今まで各地域にまばらに存在し流通していた銀行券(紙幣)を中央集権化し、国際を発行することで大規模な資金調達を可能にしたのである。


この瞬間から今に至るまで金融の膨張が始まる。銀行が消費者の預金を企業に又貸ししたり、ローンを担保に証券化することで膨張を繰り返したマネーストック(実体と実体をベースに発行されたお金の同等物の総量)は、やがて伝統的な金本位制の維持を困難にし、金ではなく軍事強国としてその価値を担保された世界の基軸通貨ドルを生み出したのである。


他にも貨幣の膨張の話、貿易の話、仮想通貨の価値の話、イスラムの先進的な金融システムの話(喜捨が持つ経済格差是正効果)など、およそ経済学で話されるものを一気通貫で説明している。すごいのは前提知識も含めて説明されているので、本当に1冊で完結してしまうことである。


読まねば実感できないであろう。とにかく勧める。



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