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【システムシンキング】弱いサッカーチームをどう強くするか
ざっくり言うと
- サッカーが大好きでJ1チームは基全節チェックするようにしているが、ジャイアント・キリングはいつ見ても気持ちが良い。
- 残酷な現実。システムシンキング的に見ても、弱いチームはより弱くなり、強いチームはより強くなるループが存在する。
- 弱いチームがループに逆らって強くなる方法は、若手の成長と売却、メンバー固定による連携強化である。
サッカーが大好き
gonjittiのTwitterより
サッカーが大好きである。好きなチームは、【川崎フロンターレ】、【FC東京】、【大分トリニータ】である。基本J1は全節見るようにするが、時間が無い時は上記のチームを見るようにしている。
サッカーなんてやったことがない人がなぜ好きなのか、これはゲームの影響だろう。FIFA20で何度もチーム編成やプレイの試行錯誤をするうちに、奥深さを学び、実際の試合から学びたいと思うようになった。今ではこのプレー、あのプレーの判断は正しいか否か、この連携は練習されているものか、偶然か、みたいなことを考えながらゲームに取り入れている。実際に効果が出たりするので面白い。ちなみに好きなフォーメーションは4-2-3-1である。
ゲームでも最近はよく設計されているが、基本的にフットボールチームは強いチームがより強くなり、弱いチームがより弱くなる構造を持っている。弱いチームが強いチームを倒す時、それは「ジャイアント=キリング」と呼ばれ、極めて貴重な試合となる。
今年のJ1シーズンでもJ3まで落ちていた大分トリニータがJ1に久しぶりに昇格し、片野坂監督や各選手の活躍で上位につけている。極めて考えられた戦略で次々に上位チームを翻弄する姿が序盤見られた。残念ながらシーズン途中で得点源の藤本選手をヴィッセル神戸に売却したため、一時的に得点源に苦しんでいま立て直し中である。
システムシンキングに基づくと、残酷な現実ループが浮かび上がる。
弱いチームはより弱く、強いチームはより強くなるループ
「実践システムシンキング」より
詳細は別記事に譲る。上図は因果ループ図と呼ばれ、要素間の因果関係を図解するものである。
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上図のうち、最も重要な要素は勝率である。勝率が増えると観戦意欲とファン数に正の要素が働き、ファン拡大とチケット収入、グッズ収入、メディア収入に大きな正のフィードバックをもたらす。
結果生まれた収入を元に、選手への投資やスタジアム投資が可能になり、選手のモチベーションや質が向上する。
当たり前だが、強者にとってはどんどん強くなる要素が生まれてしまう。逆に言えば、弱者にとってはどんどん先細りしてしまうのである。
この図解によって、チームごとにどの変数にインパクトを与えるか、というところの検証が可能である。どこかの変数に強い作用をもたらせば、チームの成長ループが急に動き出す可能性がある。次の章では弱いチームが強くなる方法を考えてみる。
弱いチームが強くなるには
では弱いチームはどう戦えばよいのか。変数に着目して考えていく。
豊富な資金力で選手を獲得する【選手へ投資】
楽天の大きなバックアップ支援を受けてイニエスタ、ポドルスキ、ダビド=ビジャと海外スター選手を次々獲得したヴィッセル神戸は典型例である。予算が許すならば一番早く強くなる。
しかし欠点があり、選手が実際にチームに入ってスキル差からうまくチームが機能しない、スキル差からチームプレーが機能しない、などの副作用を生むことがある。事実、ヴィッセル神戸も海外から選手を招聘してもしばらくは安定して勝利を手にすることが出来なかった。
だが一定期間を経ると、ワールドクラスに合わせて既存の選手の能力やチームプレーが向上していくため、固定メンバーで何回か試合を経ると途端に強くなることが多い。今年でダビド=ビジャが引退するのは残念だが、来年優勝候補を挙げるならばヴィッセル神戸は筆頭だろう。
地元交流を深め、ファンの数を増やす【ファンの数】
まあ1個目の戦略はほぼ冗談である。だいたい、弱いチームにそんな予算あるわけ無いだろう。ここからが本題である。ファンの数を増やすために練習の代わりに地元交流やイベントを増やし、ファンの数を増やす戦略である。一見して非合理(「ストーリーとしての競争戦略」から言葉をパクった)なこの戦略は、システムシンキング的には勝率のループを回す大きなカギである。
2018年までJ1リーグ2連覇を達成した常勝軍団、川崎フロンターレは、地域密着を徹底して強豪への進化を遂げたチームである。2001年J2リーグ降格、不遇の時代を迎えていた川崎フロンターレは、カウンターサッカー、風間監督のプレースタイル浸透などの戦術的な変化と並行して、地元川崎市への地域密着を徹底した。現在では2010-2017年の観戦者調査では、7年連続、「ホームタウンで大きな貢献をしているチーム」としてトップ表彰をされているようだ。ちなみに川崎市は、古くは東京川崎ヴェルディの東京へのホームタウン変更、など悲しい過去も垣間みえるが、それはサッカー好きの小話になるので置いておく。
2000年代前半はフロンターレに興味の無い子供層や主婦層に様々なイベントを企画した。サッカークラブがフロンターレ新聞や算数ドリルを小学校で配る、という施策は典型的である。当時J2だった川崎フロンターレは、学校の頒布物としてフロンターレ新聞を発行し、100円でスタジアム観戦ができる仕組みを提供した。算数ドリルは、サッカー選手がドリル内に登場するもので、英国プレミアリーグの強豪「アーセナル」が地元の学校で配布していたものを参考にしたようである。
「【愛されて勝つ】ファンと地域に支持され続ける、J・1 川崎フロンターレの関係構築とは」より
一見して非合理なこの戦略は、クラブチームの収入を増やす重要なファクターになっていることは分かるであろうか。収入と収入と選手やスタジアムへの投資ループを堅実に回した結果、現在ではトップの人気と強さを誇るようになった。
「実践システムシンキング」より若手メンバーを積極的に育て起用することで、チームのスキルを上げつつ、選手を高値売却する【選手の平均スキル】
地元のリレーション構築しても、結局強くないと人気なくなんだよ、という声が聞こえてきたので、最後は選手の投資戦略を考える。
前述の川崎フロンターレと鹿島アントラーズ、湘南ベルマーレはこの戦略があたっている。どのチームもユース強化と若手の選手起用を強化しており、多くが国内、海外問わず高値売却されている。
ラ・リーガ(スペインリーグ)でもともと2部リーグ、現在は1部リーグ中堅チームながら若手選手育成に力を入れた結果チームとして強くなったのがレバンテUDである。
小澤一郎Note「レバンテUDの統合的育成戦略とスペインの育成における『文武両道』」より
スペインでは若手の育成が徹底されており、現在では11-12歳の選手の8割に代理人がつくほど育成が激化している。選手育成ランキングでも1位がレアル=マドリード、2位がバルセロナ、4位がバレンシアなど上位に位置している。
レバンテUDではサッカー選手の育成方針を純粋なサッカースキルに加えて選手の知性、つまり学業にも力を入れることで、現代サッカーに必要なインテリジェンスの部分についても教育支援をしている。2018年のレバンテBチームのキャプテンは、スペインの大学での難関学部である薬学部を卒業しているのだそうだ。
下部組織の育成に力を入れると、選手全体の年俸の節約と強豪クラブへの売却による収入アップが見込め、弱者のループを逆転させることができるようになる。日本におけるサッカーの育成方針は現代サッカーで重要なインテリジェンスの部分が徹底されているとは言えないので、学業とサッカーを両立させるクラブチームが生まれれば思わぬスター選手を生む可能性がある。
余談(おすすめ本コーナー)
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