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【映画】王道の構成、ウィンストン=チャーチル(ヒトラーから世界を救った男)
ざっくり言うと
- 世界に暗雲が立ち込める今、英国の名宰相を観る。
- ウィンストン=チャーチルと欧州最後の生命線、英国のダンケルク撤退戦。
- 名映画って最初から最後まで素晴らしい構成。チャーチルの演技がずっと上手すぎる。
世界に暗雲が立ち込める
コロナをきっかけとして米中対立とブロック経済化が進んでいる。
前回の記事で紹介した【現代経済学の直観的方法】でも明記されているが、前回の第二次世界大戦はブロック経済で追い込まれたドイツと日本が軍事行動を移した。
米国、中国の経済を見ると、前回のドイツドイツや日本ほど追い込まれてはいないものの、経済以外の要因でも侵略戦争が起こる可能性がある。
現代世界においては秩序が比較的安定しているため、まさか戦争が起こるなんて、という感覚がいまだ世論を包んでいると思われるが、侵略側はその虚をつくことを最大限狙っている。
だが先の大戦ではイギリスがドイツの侵略を食い止めた。ロンドン空爆、上陸間近まで至ったドイツを、劣勢の状況から押し返したのは、チャーチル率いるイギリスである。
だが初期の頃はイギリスでもドイツに対し和平交渉を望む声が多かった。降伏止むなしの声が多かったのである。
ダンケルク
ダンケルク撤退戦とは、1940年5月24日から6月4日までの間に行われた英国陸軍30万人(ほぼ英国陸軍の全兵力)をフランスのダンケルクからイギリス本土に撤退させる戦いを指す。
もしダンケルクのタイミングでイギリスが陸軍を壊滅させられていた場合、ドイツ軍はイギリスへの上陸作戦を成功させ、欧州はすべてドイツのものになっていた可能性が高い。
この場合、世界秩序は今のような自由主義世界ではなかった可能性が高い。
このダンケルク以前は、1939年の9月ポーランド侵攻への勝利から1940年5月のオランダ、ベルギー、ルクセンブルク侵攻までの期間、ドイツ軍は全く侵攻の雰囲気を見せなかった。
あとになってこの期間は「まやかし戦争」と呼ばれる。フランスとイギリスは和平交渉をドイツと進めて平和と安全保障を取り戻そうと考えていたのだ。
ドイツに及び腰であったフランス・イギリスは見事にヒトラーに騙されていたのである。
1940年5月、急遽英国首相に任命されたはぐれ者、チャーチルはドイツに対して徹底抗戦を主張するが、議会は和平交渉を望む状況であった。
やがてチャーチルも戦況の悪化が伝えられるにつれ、徹底抗戦への自信をなくしていく。
そんな彼が周囲の反対を押し切ってでも、最後の望みを懸けて、本土決戦に向けてフランスで孤立中だった英国陸軍を救出する作戦がダンケルクだった。
名構成
名映画は名構成がつきものである。
政治や歴史を扱う映画では、往々にして観る人が背景知識が無いためにおいてかれがちである。
更に派手なアクションも少なくなりがち。台詞回しと演技で感情を揺さぶらなければならない。
だがこの映画は流石に2018年アカデミー賞受賞作品。上記のいずれの問題もクリアしている。
背景知識の問題は、チャーチルが新しいタイプライターの秘書を採用した、という設定にすることで、秘書に対してチャーチルが置かれた状況の説明が見事に代弁される。演説が作られる過程もチャーチルとの心のやり取りをうかがい知ることができるように構成されている。見ている観客も秘書に感情移入すればきっちり観ることができる。これは見事であった。
台詞回しと演技の部分。これはひとえにチャーチル役の俳優、ゲイリー=オールドマンが上手すぎる。ほとんどチャーチルにしか見えなかった。みごとなはぐれ者を演じている。追い込まれた時の演技も見事。
Netflixで観ることができるので、興味がある方は見てみてほしい。
なお、名映画の脚本術が知りたい方は下記の本を勧める。スクリプトドクター(脚本のお医者さん)という立場から様々な映画の脚本を見てきた三宅隆太氏が、映画の良い脚本を明解に解説してくれる。よいプレゼン作りの参考としても、僕のように映画をより深く知るために使っても良い。