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【イケア効果】ケーキを作る過程が、美味しい
ざっくり言うと
- メリークリスマス〜。いかがお過ごしでしょうか。ケーキはもう食べたかしら。
- 水を加えて混ぜて焼くだけでよいケーキミックスは売れず、後から卵と牛乳を入れるケーキミックスは売れた。
- イケアの家具は作っているうちに愛着が湧いてくる。するとイケアの家具の価値を高く見積もるようになる。
メリークリスマス
メリークリスマスである。素敵なクリスマスをお過ごしでしょうか。
僕はいつもと変わらず、ブログを書いているんじゃないかなと思います。
ところでケーキは食べましたか。ケーキは最近だと大体ケーキ屋さんで買って帰ることが多いかなあ。
自分で作ると言っても最近はケーキミックスというものがあり、あらかじめ焼くといい感じに膨らむような粉がアレンジされていたりしますよね。すき焼きのだしの素なんてのもあるし、バレンタインはチョコを溶かして作るのがほとんどでしょうし。
でも、ケーキもチョコも、作る手間が楽しいし、作ってくれた手間がうれしいんだよなあ。
間違っても「これは完全にガーナ100%」 なんて言ってはいけない。
ケーキミックスが売れなくなった
ケーキミックスが売れなくなってしまった。
1950年、ベティ=クロッカー社(アメリカ)は画期的なケーキミックスを生み出した。なんと、水を混ぜて焼くだけでケーキを作ることができる。卵や乳成分をケーキミックスに取り込んだ結果、ほぼ何もせずともケーキが焼けるようになってしまった。
YouTube(TV Toy Memories)
さぞかし売れるじゃろうと販売を開始したが、結果は今までのより売れなくなってしまったという。なぜより便利なのに売れないのか。
主婦の方々に聞いてみたところ、料理があまりに簡単なので、周りから手抜きをしていると心配したからだという。
ベティ=クロッカー社はヒアリングの結果を踏まえ、卵と牛乳の成分をケーキミックスから抜いて、料理人が後から卵と牛乳を入れるような手順のケーキミックスを再販した。
すると手間を増やしたことによる手作り感が生まれ、製品が支持されたのである。
同様の例としては、料理や模型のキット、デアゴスティーニなどの雑誌連載型コレクション、旅行の計画(行くときよりも計画しているときが楽しい)などがある。
イケア効果
ちなみにこの効果は論文を記述したダン=アリエリーらによってイケア効果と呼ばれている。
イケアは家具が基本自分で組み立てる方式である。下図は本棚。ちなみにイケアの家具のネジの規格は日本のドライバーでは閉めにくい、といううんちくがあるが、それはまた別のお話。
https://99percentinvisible.org/
イケアの家具は自分で組み立てる過程の中で、イケアの家具への愛着が湧いてくる。結果イケアそのものへの良いイメージが醸成され、次の家具を買う時にも結局イケアにしてしまうのである。
ちなみにイケアの家具は当然低コスト生産で特別優れた材木を利用しているわけではない。しかしもし自分の家具を中古品として売りに出すとき、イケアの家具は相対的に高く値付けしてしまうのである。
手間を掛けさせて相手に喜んでもらう方式は、実は世の中に沢山ある。ポケモンを育てると愛着が湧いてくる。前述のケーキやバレンタインのチョコもそのとおりである。多分買ったほうが美味い。でも過程が嬉しいのである。
参考文献
もし僕がマーケティングについておすすめ文献として最初に挙げるならば、本記事でも紹介した「東大教授が教えるヤバいマーケティング(阿部誠/KADOKAWA)」である。
嵐のライブチケット価格に関する別記事【取引効用理論】なぜ嵐のチケットは10万円ではなく、1万円くらいなのかで始めて紹介しているが、現在のマーケティング関連の理論はすべて含まれているように思う。
もっと知られてほしい本である。一橋大学教授の楠木建氏が出したベストセラー「ストーリーとしての競争戦略」みたいに。