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【未来のモノのデザイン】機械側からみた人間をうまく操作する方法とは?人間と機械のコミュニケーションを考える
ざっくり言うと
- 口うるさいホットクック。人間と機械の心理学。
- 人間と機械が調和された状態とは?危険な空港ほど安全?オランダの自転車交通。
- 機械からすると人間は面倒くさい?ノーマンが語る人間と調和する機械の条件。
うるさいホットクック。
最近、ホットクックがめっちゃ喋ることを知った。
ホットクックとはシャープが提供する炊飯器型調理器具で、水を使わずに食材の水分だけで旨味を凝縮した無水料理が作れるというスグレモノで、めっちゃ売れている。煮込み、蒸し、炒め、低温調理まで、正直何でもできる。筋トレ民にとってはサラダチキンが量産できるのも最高だ。
だが、これが親切なのかおせっかいなのか、結構うるさい。シャープお得意の音声認識技術を応用でもしたのか、「こんにちは、今日は花粉がすごいです」とか「天気が曇り」とかどーでも良いことを言ってくる。使用が100回を超えると100回です、やったねみたいなことも言ってくるので、正直うるさい親戚のおばさんがいる感じだ。
調理が完了したか否かとかを伝える必要もあるので、音声自体が発生するのはしょうがないが、流石に音声に頼りすぎだし、コメント多めで多くの人間はうっとうしいと感じるだろう。
人間と機械の調和とは
最近、人間を超える力を持つ機械が増えた。車線をはみだろそうとすれば、強制的に走行レーンに戻される。ブレーキも勝手にかけてくれる。ならば人間はもうクルマを操作しなくて良いのではないか?渋滞で爆睡するドライバーが続出する。
だが完全自動運転で事故を起こすと、責任は誰になるのだろう。製造者責任になるのか。被害者は誰を責めればよいのか。
飛行機の着陸事故について、興味深いデータがある。一般に着陸は平坦で周りも更地で建物などの障害物がない砂漠のような地形ほど安全だ。かつての香港のような、建造物だらけでおまけに滑走路が平坦じゃ無い場所は危険なはずだ。だが事故は更地の空港のほうが少なかった。パイロットが油断して普段起こさないミスを起こしてしまうからだ。
オランダは自転車交通が発達した都市だ。自転車と歩行者の交通は日本だと結構適当で、最近だと自転車が車道を通るようにして整理されているが、オランダでは自転車と歩行者があえて同じ道を通るように整理している。ぱっと見は危険だと感じる。
だが実際は歩行者と自転車が強調し合うようになり、事故が減っている。オランダではボンエルフという仕組みを用いて、あえて歩行者と自転車をまぜこぜにして自転車側が「常に歩行者側に気を使って走行する」自律的な状態を構築しているのだ。ここに人間と機械の調和状態があるとノーマンは述べる。
機械からすれば人間は面倒くさい。人間と調和する機械の条件
本著の最後に興味深いおまけがついている。機械とノーマンの対話だ。
機械からすれば、人間はとっても厄介な存在らしい。何もできないくせに操作感がほしいという。そして機械たちは人間をうまくコントロールする法則を作った。
- ものごとを簡潔にする。
- 人間には概念モデルを与える。
- 理由を示す。
- 人間が制御していると思わせる。
- 絶えず安心させる。
- 人間の振る舞いをエラーとは呼ばない。
一方、人間が(というかノーマンが)作成した賢い機械をデザインするための人間へのルールが下記だ。
- 豊かで複合的で自然なシグナルを与えること。
- 予測可能であること。
- 良い概念モデルを与えること。
- 結果が理解可能であること。
- 煩わしくなく、連続的な気づきをもたらすこと。
- 自然なマッピングを活用すること。
見ていると、結構類似している事がわかる。この本は機械を擬人化してデザインを研究する特徴があるが、機械の視点からみた人間の操縦ルールと、人間のデザイナー向けの機械のデザインルールが類似するということは、デザイナーは機械を擬人化してデザインする視点を持ったほうがよいということである。
ホットクックで僕は「口うるさい」と述べた。典型的な機械の擬人化だが、ホットクックをデザインする人は、ホットクックがどのように人間に語りかけるのか、触れるのかを考える必要がある、ということだ。
ルールの詳細は本著の流れを読んでいただかないと把握が難しいかもしれないので、ぜひ手にとってセカイを捉え直して見てほしい。