Gonjitti Blog
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【書評】準備の過程を見せて大衆を盛り上げる。「ヒトラーの大衆扇動術」(許成準/彩図社)

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ざっくり言うと

  1. 名政治家から独裁者に。ヒトラーの狂気を学びたいと思っていた。
  2. 大衆扇動の基本は熱狂させ、感情を煽り、盲信させること。
  3. 徹底的に演出してヒトラーの登場を焦らし、大衆を熱狂させた。


ヒトラーの狂気にある、底しれぬ魅力


いまだに強烈な印象を残し続ける人物がいる。スティーブ=ジョブズとアドルフ=ヒトラーである。


毎年のiPhone発売のタイミングで必ず「ジョブズが生きていたらこんなデザインはなかったなあ」なんて話がでる。


20世紀の歴史を振り返る上で、誰もが触れる人物は、間違いなくヒトラーである。

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「ヒトラーの大衆扇動術」(許成準/彩図社)は、ヒトラーの扇動術にフォーカスし、彼の生き様や戦略を事細かに記載した書である。


大衆が熱狂するヒトラーの演説は、1回聞くと忘れられない。私はドイツ語がわからない。何を言っているかは全くわかっていないのに、ひと目で当時のカリスマであることがわかるのである。


事実、ヒトラーの演出技法は後のロード・オブ・ザ・リングなどの映画にも利用され、大衆を熱狂させている。



大衆扇動の基本は熱狂させ、感情を煽り、盲信させること


このようにして完成されたナチスの宣伝原則は、次のように要約される。
1 大衆を興奮させること。彼らを冷静なまま置いておかないこと
2 いかなる間違いや失敗も認めないこと
3 非難を受け入れないこと
4 代案の余地を残さないこと
5 敵に何か長所があることを認めないこと
6 敵を責める時は、一度に一つの敵だけに集中すること
このような原則をヒトラーは自ら徹底的に守った。
「ヒトラーの大衆扇動術」(許成準/彩図社)より引用

典型的な洗脳の手口であるが、これを忠実に実行したのはヒトラーである。
ヒトラーは「ちょび髭」という特徴的なスタイルを装い、第一次世界大戦後、疲弊し続けたドイツ人に向け、当時の富裕層であったユダヤ人を敵視し、過剰すぎる怒りをもって演説を行い、大衆を熱狂させ、興奮させ、盲信させた。


ヒトラーは、演説は毎日2-3時間の練習を欠かさなかったという。全身が映る三面鏡を利用し、自分の演説のワンシーンを写真家に撮らせ、移り方を研究し続けた。毎日、毎日である。


ヒトラーのカリスマ性をさらに盛り上げる要素として、プライベートを一切明かさなかったことも知られている。プライベートは基本、山あいの麓ににある別荘(ケールシュタインハウス@ベルヒテスガーデン)で暮らし、そこで側近を集めて様々なナチスの戦略を練っていた。

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wikipedia「ケールシュタインハウス」より引用

プライベートが一切明かされないことも、カリスマ性の向上に役立った。事実、ベルヒテスガーデン周辺はヒトラーをひと目見ようと訪れたドイツ人の車で連日渋滞していたという。



ヒトラーが出るまで1時間。演出の緻密さ

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「ナチス党大会跡・証拠記録センター」より引用
彼は自分の演説が始まる前に、徐々に雰囲気を盛り上げていくような、政治集会としてはかなりユニークな方法を使った。  これは今日のスペクタクル映画で使われる展開方法とよく似ている。戦争映画ではクライマックスの本格的な戦争場面に入る前に、戦闘準備の過程を見せてテンションを上げていくというストーリー展開がよく使用される。この手法はビルド・アップ(buildup)と呼ばれ、映画「ロード・オブ・ザ・リング(The Lord of the Rings)」の監督ピーター・ジャクソン(Peter Jackson)も非常に重要視したテクニックである。
ヒトラーは自分が演壇に登場する時、雰囲気を徐々に高めていくビルドアップ・テクニックをよく使った。高々と上げられた多数のナチ旗、荘厳なマーチ、合唱、シュプレヒコール、まるで宗教儀式のように繰り返される「ハイル」の叫び。それらは全て「偉大な総統」の演説に対する期待感を高めるために、神秘的な雰囲気を作り上げるプロセスであった。
「ヒトラーの大衆扇動術」(許成準/彩図社)より引用

ヒトラーは自身の演説を過剰なまでに演出した。演説は必ず夕暮れ時。暗くなるにつれ、オペラやマーチ、合唱などが展開される。やがて大衆のどこからかシュプレヒコールが発生し、大衆が「ハイル・ヒトラー」と彼の登場を待ちわびる。ヒトラー登場まで、1-2時間かける。


雰囲気を高める工夫と、シンプルな掛け声「ハイル・ヒトラー」は大衆の健全な理性を失わせる。現代だと屋外ライブフェスは同様の雰囲気が現れている。


この準備の過程を見せてユーザーを盛り上げる仕組みは、私はリーンスタートアップのティザーサイトからβ版、製品リリースの仕組みと酷似していると思われる。ある突然サービスが出現しても、ユーザーとは温度差がある。そうではなく、過程をオープンに見せて、いよいよサービスが完成する時、ユーザーは熱狂してくれる。


もう一個現代での応用例はクラウドファンディングであろう。クラウドファンディングを成功させた人に聞いた秘訣は、「いかにクラウドファンディングそのものを盛り上がっているように見せるか」だという。徹底的にSNSや情報解禁を行い、同じプロダクトやサービスに対しても愛着をもってもらうように時間と手間をかけるのである。


新規サービスを立ち上げるべく、私は絶賛準備中である(多分知っている方も多いが)。
演出方法をヒトラーに学び、自分のサービスにユーザーが熱狂してくれるよう、尽力する。



余談(おすすめ本コーナー)


おすすめデザイン本。ずっと使えるデザインのコツがびっしり。自分もよく利用してます。