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【マーケティング】西武園ゆうえんちリニューアルに見る、徹底した異世界構築と連想
ざっくり言うと
- 長らく休園していた西武園ゆうえんちが5/19に復活。昭和30年代の世界観を再現。爆当たりを確信。
- 仕掛人はUSJの復活を果たした株式会社刀の森岡毅氏。マーケティングの勉強でひたすら書籍を読み漁った。
- 強烈な異世界体験による遊園地の復活。アトラクションより狭間の体験を徹底して異世界にする。ハリーポッターもUSJの好例。映画からの連想も強烈。
西武園ゆうえんち、昭和の遊園地としてリニューアル
老朽化で長らく休園していた西武園ゆうえんちが、帰ってくる。それもただの遊園地ではない。
在りし日の昭和30年代の商店街の雰囲気を押し出し、よくあるアトラクションで引っ張る従来の遊園地とは全くの別物になった。
どちらかといえば商店街におけるでみせや喫茶店、駄菓子屋や金物屋といった昭和の再現に徹している。
遊園地内では独自通貨「西武園通貨」が流通しており、郵便局で引き換えて利用することができる。マーケティング的には使い尽くしがなく、あまった通貨を持ち帰ることで他の人に見せびらかし、口コミを狙っていると考えられる。さすが良い仕掛けだ。
仕掛人は株式会社刀の森岡毅氏だ。マーケティングの世界では知らない人はいない、名士である。
瀕死のUSJを復活させた森岡毅氏
USJは2001年に開園したが、人気が次第に落ち込んで2010年には年間700万人前半まで落ち込んでいた。2014年投入予定、起死回生のプロジェクトとしてハリーポッター計画があったが、USJの規模ではこれがコケたら潰れる、というよりこれがリリースする前に入場者数減で潰れる可能性があった。
2010年に入社した森岡毅氏は、特命でハリーポッタープロジェクトの入場者数を見積もり、勝算があるかを調査し、実現させた人物である。そしてハリーポッタープロジェクトまで会社が持たないと分かった森岡氏は、逆向きのジェットコースターを走らせて書籍を出すことで食いつないだのだ。その書籍が「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (KADOKAWA)」である。
奇抜なアイデアがお家芸だが、もちろん綿密な計算に基づいた上で仕掛けをするのだ。その実は森岡毅氏と今西聖貴氏の共著、「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 (角川書店単行本)」で細かく書いている。マーケティングを勉強する上で需要予測の事例が載っているのは貴重なので、何度も通読させていただいた。
ヒットのコツは強烈な異世界体験と連想にあり
ディズニーランド(の歴史)が好きすぎて過去に3部作を書いたこともあるが、ディズニーランド然り、USJ然り、前提として強烈な異世界体験、それも体験が可能な限り続くこと、現実世界に一度も引きずり込まないことこそ、遊園地勝利の鍵であると言える。アトラクションだけが遊園地ではない。
西武園ゆうえんちではアトラクションに加え、商店街に力を入れている。商店街では園内通貨が流通し、遊園地では考えにくい、名物警察官や八百屋、魚や、金物屋もあるようだ。食事に関しては純喫茶で懐かしのナポリタン、ゼリイポンチを楽しむことができる。
そしてずるいのは、西武園ゆうえんちが埼玉県の所沢にあることだ。そう、オトナ帝国である。かの名作映画、「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」の連想を狙っているのだ。まさか狙ってないとは言わせまい。子供映画というより、むしろ大人たちを大感動させてしまった怪作にして名作である。更には、「ALWAYS 三丁目の夕日」の連想ブーストもかかっている。マーケティングの鉄則である連想を生かした西武園ゆうえんちの復活に期待したい、というか早く行きたい。