【未来のつくりかた-Audiで学んだこと-】アウディの日本人デザイナーが語るデザインセンスの価値とEVの未来。
デザイナー和田智氏が生んだアウディのスタンダードとデザインが持つ力。そして一足早く作り上げたEVに見えるクルマ社会の未来とは。
最近の自動車は奇抜なデザインが増えている。80年代の鉄仮面時代、90年代の角丸時代、00年代の流線型時代、そして10年代の華美な主張時代。バブルの頃も一時期起きたブームだが、どのメーカーも目立つことが先行し始め、デザインの鮮度が保てなくなる期間に入る可能性がある。今までも愛されるロングライフなデザインは、思いの外シンプルだ。フォルクスワーゲンのビートルやアウディのTT、日産のスカイラインなど。
今回は日産、アウディにてカーデザイナーを努めた和田智氏のエッセイ集「未来のつくりかた-Audiで学んだこと-」(和田智氏/小学館)」から、デザインの鉄則とEV試作が予言していた未来を紹介する。
アウディに転職した和田氏は、ドイツでの生活や女性の気高さに衝撃を受ける。ドイツではモノが少なく、「女性にむけた優しい〇〇」みたいな細かい差別化を意識した商品が全くないのだ。ドイツの女性も日本で好まれがちな「かわいい」とは異なり、気高さがあるという。
そしてドイツ車に現れている通り、ドイツ製品は無骨でデザインの芯を食ったものが多い。バウハウスの伝統を受け継ぎ、徹底した合理的デザインだ。和田氏も影響を受けたというブラウン(電動歯ブラシで有名な家電メーカー)にて40年以上もデザインを手掛けてきたディーター=ラムスは、良いデザイン10箇条を下記のように掲げている。特に最後の「可能な限りデザインを抑制する」という法則は、デザインの本質である、少ないものほど良い、という、アップルのデザイナージョナサン=アイブに受け継がれる本質を感じる。
98年の日産デザイナー時代に、和田智氏はEVコンセプトカー試作プロジェクト(のちに若干台量産)に携わっていたことがある。いまでこそEVはテスラのような高級路線と商用路線で地位を築きつつあるが、98年当時はまだEVが果たす役割や将来のクルマ社会は不透明なままであった。
[wikipedia]https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%94%A3%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%8B)
利益が見込めないということでプロジェクトは頓挫、和田氏はアウディへと移籍するこtになるが、当時のハイパーミニが担っていたコンセプトが2021年の今、現実的な課題解決の方法として現れつつある。
EVによるカーボンニュートラル、EVのカーシェアが草食系やミニマリストにとって最適なコミューターになるのでは?EV同士の通信コミュニケーションによる交通問題やソフトウェアサービスの向上などなどの課題は、すでにハイパーミニでも検討されていた。20年かかったがリアルに解ける世界が近づいてきている。事実、テスラはOSアップデートで様々な機能を付加し、最新モデルはゲームができるらしい。
私はEVのクルマ社会の大きなチャンスはECU、つまりソフトウェアにあると考えているが、果たしてどうだろうか。クルマにクルマ以外のサービスを掛け合わせることもできれば、クルマ本来の走る歓びを追求することもできるだろう。ソフトウェアならば、低コストで自由自在だ。私自身、クルマ好きの一人として突き詰めたい課題である。
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