【スターウォーズ】スターウォーズとハリーポッター、ロードオブザリングの奇妙な一致

世紀のスペースオペラ「スターウォーズ」は、典型的な英雄神話構造を備える。

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StarWars公式HP

ざっくり言うと

  1. 12/20にスターウォーズ第9作「スカイウォーカーの夜明け」が公開。世紀のスペースオペラは再び終わりを迎える。
  2. スターウォーズ生みの親、ジョージ=ルーカスは、名作戦争映画「地獄の黙示録」を指揮した友人の映画監督フランシス=フォード=コッポラから、自分の好きなモノを詰め込んで奇跡の宇宙SFを作り出す。
  3. ヒットするストーリーには原則がある。神話学者ジョーゼフ=キャンベルのは英雄譚の基本構造を示し、ブリュージーズは、観客は典型的な構成を持つストーリーに共感することを示唆している。


12/20「スターウォーズ-スカイウォーカーの夜明け-」公開


いよいよスペースオペラが再び完結する。6作の原作者ジョージ=ルーカスの手を離れたスターウォーズは、ディズニーの指揮下で再び復活し、そしていよいよ本日12/20、第9作の公開をもって終了となる。


私はスターウォーズの大ファンである。好きなキャラクターはエピソード6「ジェダイの帰還」で登場するエンドアの住人、イウォークである。彼らはハン・ソロを丸焼きにして食べようとしたり、ターザンスタイルで帝国軍のウォーカーを倒すなど、凶暴だが可愛らしい狩猟民族である。誰もついてこなくなるのでイウォークについてはこれまでとしよう。


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StarWars公式HP


ちなみに好きなメカはTIEファイターである。帝国軍の主力戦闘機で、独特な形状が特徴である。エンジンの音が甲高く、さながらナチス=ドイツの急降下爆撃機スツーカを彷彿とさせる。スツーカってなんだよ、とか言わないでほしい。これまでとしよう。


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StarWars公式HP


とにかく、ディズニーが第7作以降第12作まで制作続行を決めた時は、まだ僕らは夢を見続けることができる、と歓喜に湧いたが、第7作、第8作は賛否両論が続いている。ジョージ=ルーカスの世界観に基づく一貫したストーリーが所々で崩壊し始め、スターウォーズなんだけど、スターウォーズではない映画が続いている。第9作もどうやら賛否両論らしいが、果たして大丈夫か。


まあ、何をいっても結局映画館にいったら、20回くらいボロ泣きするのだろう。有名なストーリーのクレジットが表示された瞬間、涙を流せるのは僕くらいだろう。とにかく、楽しみである。


以下では、ジョージ=ルーカスがいかにしてスターウォーズを生んだか、ヒットの秘訣はなにかを解き明かしていく。解き明かすのは最近のマイベストヒット本、「ヒットの設計図-ポケモンGOからトランプ現象まで-(デレク=トンプソン著/早川書房)」である。豊富な事例からヒットの基本構造を見出すことができ、大変参考にさせていただいている。あと和訳がうまいので大変おもしろい。




ジョージ=ルーカス


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nicolas genin - Flickr, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8910205による


スターウォーズの生みの親、ジョージ=ルーカスは、伝説の宇宙ヒーロー漫画「フラッシュ=ゴードン」のアニメを見て、ぜひとも自分が映画化したいと思っていた。フラッシュ=ゴードンは金髪ヒーローが反乱軍を率いて凶悪な組織に挑むストーリーで、レーザー剣、光線銃、マント、中世風の衣装、魔術師、宇宙船、宇宙の戦闘がスターウォーズと酷似する。


しかし彼の夢は叶わなかった。映画化権は別のイタリア人監督、フェデリコ=フェリー二に渡り、失意の中、兄貴分の映画監督、フランシス=フォード=コッポラと夕食を食べていた。


彼はコッポラと会話する中で、やがて自分で脚本を書いて映画化する決意をする。1971年のことである。


脚本の制作は混迷を極めた。一筋の光となったのは、当時のコミック「The New Gods」の中に出てくる、「ザ・ソース」と呼ばれる不思議な力を操るヒーローと、「ダークサイド」と呼ばれる悪の組織との戦いである。


さらにルーカスは、神話学者ジョーゼフ=キャンベルの神話の構造がもつヒットの原則をまとめた書籍の決定版「千の顔を持つ英雄」から英雄神話の基本構造を読み取り、映画の脚本の骨子にすることを決める。ちなみにジョーゼフ=キャンベルの物語原則を忠実に守った別の映画として、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズが存在する。



脚本が進む中で、ベトナム戦争が始まる。ルーカスはベトナム戦争から、「強固なテクノロジーをもつ帝国が自由を求める小集団を叩き潰そうとする」戦争映画、としての側面を見出していく。ちょうどコッポラも本物の兵士を利用した伝説の戦争映画「地獄の黙示録」の映画を進めようとしており、ジョージ=ルーカスに映画監督を依頼する予定だったが、ルーカスはこれを拒否、スターウォーズの製作にのめり込んでいく。


ルーカスは自分の好きなジャンルを全部詰め込んでしまった。前述したフラッシュ=ゴードン、漫画の要素、神話の構造などに加え、西部劇や時代劇、チャンバラにも影響を受けている。


特にルーカスは黒澤明監督の映画「隠し砦の三悪人」に強い影響を受けている。農民たちが姫と侍大将を暴力からかばうこの映画は、弱者が強者に挑むシンプルな物語構造を持ち、剣による戦闘、すなわちライトセーバーの戦いはチャンバラをモチーフとしている。



人々の心を掴む物語


スターウォーズは舞台設定とアクションに目がいってしまうが、物語の骨子だけを抜き取ると非常にシンプルである。


初期三部作(エピソード4/5/6)では、ルーク=スカイウォーカーという息子が、ダース=ヴェイダーという父の存在を乗り越えようとする話である。


その道中にはいくつもの困難が伴い、最後にダース=ヴェイダーとの直接対決が待ち受ける。


神話学者ジョーゼフ=キャンベルは「千の顔を持つ英雄」の中で、世界中あまたある神話の中に物語の基本構造を見出している。現代まで伝わる神話には、典型的な構造がある。


一見ごく普通の男が旅に出て、見知らぬ世界へ足を踏み入れていく。いくつか大きな危機を、救いの手を借りながら乗り越え、やがて究極の試練に直面する。そして最終的に勝利を収め、英雄として、あるいは「預言者」、「ザ・ワン(全能の存在)」、「神なる子」などとして、元の世界に戻るというストーリーである。ハリー・ポッター、ルーク・スカイウォーカー、モーゼ、ムハンマド、「マトリックス」のネオ、「ロード・オブ・ザ・リング」のフロドなども、そういう英雄たちであり、もちろんキリストもここに含まれる。


ストーリーテリングの研究者、ヴィンセント=ブリュージーズによれば、物語の重要な3要素として、「人を鼓舞すること」「感情移入できること」「サスペンス」を挙げている。


ヒーローは欠点のある普通の人間が苦難の果てに勝利を手にしなければならない。それが人を鼓舞する。

観客は、だれもが自分をヒーローに置き換えて映画を観たい。すなわち、ヒーローは完璧な存在ではなく、運命に抵抗する普通の人間くささが必要である。


さらに、栄光への道の途中では、様々な失敗要素が加わり、なんども観客をハラハラさせなければならない。


物語の基本構造は変わらず、ありとあらゆるヒットした映画は見せ方と多少のアレンジが加わっているだけである、というのが、物語学の定番として理解されている。12/20、本日公開となるスターウォーズは人々を感動させる物語なのだろうか。久しぶりに映画館に足を運ぶことになるだろう。



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