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『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』から学ぶ、現代のチームで成果を出すためのマネジメント術

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HIGH OUTPUT MANAGEMENT

Intelを世界的な大企業へと押し上げた伝説的な経営者、アンディ・グローブ。彼が遺した名著 『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』 は、30年以上前に書かれたにもかかわらず、今なおマネジメントの原理原則を教えてくれる不朽のバイブルだ。

先日、本書を再読する機会があったのだが、その普遍的な洞察に改めて驚かされた。そして同時に、現代のIT業界、特にリモートワークが浸透した環境でこそ、彼の教えがより一層の輝きを放つと感じたのである。

この記事では、 『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』 のエッセンスを抽出し、現代の文脈でどのように活かせるか、具体的なアクションプランと共に解説していきたい。

本記事の要点は以下の通りだ。

  • マネジャーのアウトプットは、自身のチームのアウトプットそのものである。
  • 限られた時間で成果を最大化するには、 「テコの原理(レバレッジ)」 を意識した活動が不可欠である。
  • マネジャーにとって最も重要な業務は、部下との 1 on 1 ミーティングである。

マネジャーのアウトプットとは何か?

グローブは、マネジャーのアウトプットを以下のように定義している。

マネジャーのアウトプット = 自分の組織のアウトプット + 隣接する組織に対する自分の影響力のアウトプット

これは衝撃的な定義ではないだろうか。つまり、マネジャーの価値は、自分がどれだけ働いたかではなく、 チームや組織全体としてどれだけの成果を生み出したか によって測られる、ということだ。

自分のタスクリストを消化することに躍起になったり、深夜まで一人でコードを書いていたりしても、それがチームのアウトプット向上に繋がっていなければ、マネジャーとしての価値は低い、とグローブは断言する。

この考え方は、特にプレイングマネジャーとして多忙な日々を送る若手リーダーにとって、自身の役割を再認識する良いきっかけとなるはずだ。あなたの仕事は、プレイヤーとして成果を出すことではなく、 チームという「装置」のアウトプットを最大化させること なのだ。

テコの原理(レバレッジ)を効かせる

では、どうすればチームのアウトプットを最大化できるのか。その鍵となるのが 「テコの原理(レバレッジ)」 という考え方だ。

レバレッジとは、 最小の労力で最大の結果を得るための活動 を指す。グローブは、マネジャーのあらゆる仕事は、レバレッジの大小で評価できるとしている。

高いレバレッジを持つ活動の例:

  • 部下のトレーニングやコーチング(一度教えれば、その部下は継続的に高い成果を出す)
  • チームの業務プロセスやツールを改善すること(一度の改善が、チーム全体の生産性を永続的に向上させる)
  • 効果的な情報共有の仕組みを構築すること(適切な情報が適切な人物に届くことで、意思決定の質とスピードが上がる)

リモートワーク環境では、このレバレッジの重要性がさらに増す。例えば、Slackの特定チャンネルの運用ルールを定めたり、Notionでプロジェクトの意思決定プロセスをドキュメント化したりすることは、非同期コミュニケーションにおけるチームの生産性を劇的に向上させる、極めてレバレッジの高い活動と言えるだろう。

あなたは、日々の業務の中で、どれだけ 「高レバレッジな活動」 に時間を投資できているだろうか?

最も重要なマネジメント活動:1 on 1 ミーティング

グローブは、数あるマネジメント活動の中で、 部下との 1 on 1 ミーティングが最も重要だ と繰り返し述べている。

1 on 1 は、単なる進捗確認の場ではない。部下の抱える課題や懸念、キャリアに関する悩みなどを深く理解し、パフォーマンスを向上させるための「高レバレッジ」な時間なのだ。

グローブが推奨する 1 on 1 のポイントは以下の通りだ。

  • 時間は部下のために使う: 部下が話したいことを話せるように、アジェンダは事前に部下に準備してもらう。
  • 頻度と時間を確保する: 最低でも隔週で1時間。部下の経験が浅いほど、頻度は高くする。
  • メモを取り、約束を守る: 1 on 1 で話した内容や約束したことは必ず記録し、実行する。

現代のリモート環境では、Google DocsやNotionといった共同編集ツールを活用し、 1 on 1 のアジェンダと議事録を共有するのが極めて有効だ。これにより、話すべきことが明確になり、過去の対話の文脈も失われない。

1 on 1 は、マネジャーにとって最も価値ある投資である。もしあなたが 1 on 1 を軽視している、あるいは単なる雑談で終わらせてしまっているなら、今すぐそのやり方を見直すべきだ。

結論

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』 は、マネジメントの本質が 「個人の成果」ではなく「チームの成果」の最大化にある ことを教えてくれる。そして、そのための具体的な方法論として、 「テコの原理」 と 「1 on 1」 の重要性を説いている。

本書の教えは、30年以上経った今でも色褪せることはない。むしろ、変化が激しく、働き方が多様化した現代においてこそ、すべてのリーダーが立ち返るべき原理原則と言えるだろう。

もしあなたがチームの成果をもう一段階引き上げたいと願うなら、ぜひ本書を手に取り、自身のマネジメントスタイルを見つめ直してみてはいかがだろうか。